おわりに
以上のように、外国人労働者の受け入れによる効果はGDPギャップの状況により大きく左右されることになり、日本が抱える人口減少や経済成長率の停滞、財政健全化といった問題のマクロ的な解決策としては諸刃の剣にもなりうるといえるだろう。ただし、構造的に人手不足が生じている地域や産業にとっては、外国人労働者の受け入れが死活問題となる側面もある。従って、外国人労働者を地方や産業の人手不足を補うために一定の基準のもとで積極的に受け入れることは重要であるといえる。
海外では多くの国で外国人政策を一括で所管する行政機関があるが、日本でも新たな外国人材受け入れなどに向け、法務省が現在の入国管理局を格上げし、2019年4月に外局の「出入国在留管理庁(入管庁)」を設置した。そして、入管庁では外国人材受け入れの環境整備に関する総合調整を担っており、出入国を管理する部署では出入国に関する事務や不法在留の取り締まりなどを担当し、在留を管理支援するは部署で他省庁や地方自治体と連携して在留外国人の生活環境整備を進めている。そして、地方出入国在留管理局8局、同支局7局、出張所61か所及び入国管理センター2か所が設置されているが、韓国では定住支援センターが全国に100か所以上存在していることからすれば、日本もサポート体制を拡充していくべきだろう。
また、高度人材の受け入れについては、日本の言語や文化になじむ期間がある留学生の受け入れ拡充も有効だろう。しかし、労働政策研究・研修機構のアンケート調査等よれば、留学生が日本の硬直的な採用システムに不満を抱いていることがわかっている。従って、日本も画一的な新卒一括採用のみではなく、柔軟な採用時期やプロセスを支える公的な制度を官民が協力してより一層推進する必要があるだろう。更に、外国人材の東京一極集中を防ぎ、地方創生に生かすためには、地方に特区を設けて積極的に外国人材を集めること等も検討に値しよう。
(文=永濱利廣/第一生命経済研究所経済調査部首席エコノミスト)
提供元・Business Journal
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