マッカサーらGHQは、先の戦争で天皇が利用され地獄をみた日本人に考えてもらって、自分らで民主的な憲法を作ることを手助けしたかった。占領したのが例えばソ連ならそのまま占領継続、もしくはソ連が勝手に新憲法を作り押し付けただろう。GHQは違った。まずは日本側に草案を作らせた。出来上がった松本案をみて目を疑った。天皇に全権。明治憲法とほぼ同じ。驚いたケーデイスらは9日間で現在の憲法を作り上げて、日本に押し付けた。

ケーデイスらが思いつき、実行したことの重要な柱の1つ。「非軍事化」、他国を侵略できないようにするための手段が9条だった。

当時もいまも、時代はもちろんのこと、国家、個人と関係なく「正当防衛」「個別的自衛権」は、絶対に認められるべきものだ。自分やその家族、祖国が誰かに攻撃された時、反射的にでも、反撃する。当たり前のことなので、筆者はわざわざ聞かなかった。だが米国人としても当然のこと。さらに、右の頬を殴られた時、左も差し出す人も少しはいるかもしれない。しかし人間としても動物としても、「種の保存」本能もあり、外敵から攻撃された時、自分らを守るのは、間違いなく当然のこと、権利であり義務でもあるだろう。

日本国憲法の制定とは、直接関係ないこともある。国連憲章第51条では「安全保障理事会が、国際の平和及び安全の維持に必要な措置をとるまでの間、個別的又は集団的自衛の固有の権利を害するものではない」と書かれている。

その上で、占領期がいずれ終り、独立国として日本が独自にじぶんたちで憲法の内容を精査、日本人が自分らの判断で「修正すべきはする」という期待感も、ケーディスとその仲間に明確にあった。

ご本人が言ったように、当時は日本を直接攻撃、侵略する外国勢力などなかった。冷戦がそろそろ始まりつつある時期なので、米国の潜在的な敵としてソ連はあったが、日本に対する直接的な外敵とは言えない部分もあった。

そして昨年のプーチンによるウクライナ侵略が起きた。国際政治の常、双方に言い分があるし、検討精査できる無数の背景説明要因が存在する。

断言できることが1つある。

日本人の多分半分くらいが信じていること。「9条」があり「戦争をしない国」と言えば「侵略されない」「平和が維持できる」という考え。これは「妄想」で「勘違い」ということ。

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世界の常識として、9条があろうがなかろうが、プーチンや習近平のような独裁者は、自分の都合と論理・言い訳で、他国を侵略する可能性が十分ある。9条があるからと言ってなんの遠慮も躊躇もしない。逆に日本が9条を「水戸黄門の印籠」のように掲げながら、誰も侵略しないと信じ込み、抑止力を高めず、無防備な状態を続ければ、独裁3期目に入った習近平などは「自軍の犠牲が無くなる」と、心から喜ぶだけ。間違いない。