クジラネズミ(whale-rat)
遠い将来、哺乳類の種が絶滅し続ければ、げっ歯類にとっては繁栄する態勢が整うことになるという。
ミドルベリー大学の古生態学者であるアレクシス・メカジュリウ氏は、ニューヨークのような大都市でも繁栄するために適応力を進化させ続けているネズミに注目している。彼らは、重金属汚染や放射能の中での生活にさらに適応したり、将来的には有毒な廃棄物を食べたりすることさえできるかもしれないというのである。
そして、陸上での生活が今後さらに厳しくなると、ネズミはゆっくりと海や川での生活に移行していくという。おそらく、彼らの進化した子孫は毛皮や手足を失い、完全に水生生物の存在に適した流線型のボディを発達させるというのだ。
前例として、アザラシやクジラのような他の海洋哺乳類は、陸生生物から水生生物への移行においてこの道をたどっている。

この完全に水生に適応した「クジラネズミ(whale-rat)」はペンギンのような水かきを持ち、ウナギのような尻尾を持って水の中で活動するという。ネズミもまた海洋に進出するのだ。
プラスチックを食べるシロアリと「セーリングバット」
未来の動物について考えるうえで、未来の地球環境を想像することも必要である。
人間が行った環境破壊により、人類が去ったとしても環境中のプラスチック汚染は何千年も続く可能性があるという。プラスチックに囲まれた環境にどのように適応するかもまた生物にとっての課題なのだ。
スミソニアン国立自然史博物館の進化生態学者であるサハス・バーブ氏は、プラスチックは「すべての生物が依存する大きな炭素源」であると述べている。今後プラスチックは食物になる可能性があり、「それを利用できる動物ならどれでも成功するだろう」と言及している。
具体的にはシロアリはそのような生き物の1つである可能性があり、すでにセルロースを分解できるシロアリが、プラスチックのようなポリマーを分解するように適応することを想像するのは難しくないという。

また、温暖化による海面上昇により陸地が狭くなるため、前出のクジラネズミのほかにも多くの陸上生物が海に進出することになると考えられている。
ワシントン大学の生物学教授であるシャーリーン・サンタナ氏は、コウモリの種がどのように進化して海の外や周辺に生息するかを考察している。翼幅が1.8メートルほどもある大型コウモリが海上を滑空し、獲物の魚を求めて水中でも機能するエコーロケーション能力を獲得するという。実際に一部のコウモリはすでにこの能力を持っているということだ。
ちなみにサンタナ氏はこの未来のコウモリを「セーリングバット(sailing bat)」と呼んでいる。