マーケティングリサーチの光と影
大谷選手の広告モデル起用の背景として、プレスリリースでは上記のように説明されているが、裏話のような興味深い実態が4月6日付日本経済新聞「ヒットのクスリ」に記載されていた。
「3G」に接点を持つ企業アンバサダー(広告モデル)の選定において、当初はユーザーの大半が女性であることも考慮し、社内では韓国の人気グループを推す声が強かったとのこと。しかし、野球人の枠を超えた誠実さ、雰囲気、美しさ、「3G」の観点からも大谷選手が適任であると、社長の小林一俊氏が社内を押し切る形で実現させている。
確かに、大ヒットとなっている現時点から振り返れば、つまり結果論的視点に立てば、大谷選手は海外での活躍や老若男女を問わない人気の高さなど、「3G」とも見事にマッチしているように思われる。しかしながら、一般的なマーケティングリサーチを実施すれば、そもそも野球選手の起用など候補にすら挙がらず、韓国の人気グループが適しているという結果になったのではないか。
つまり、形式的なマーケティングリサーチを実施して得られる結果は、「誰からも悪いとは思われない、極めて常識的な答え」にすぎない。表層的な顕在化した消費者ニーズの収集にとどまると言い換えてもよいだろう。例えば、ミュージシャンや芸術家が「みなさん、どのようなものが聴きたい、見たいですか? それに対して我々はアウトプットします」といったスタンスに立てば、誰からも強い感動を得られないだろう。
もちろん、マーケティングリサーチの重要性を否定するつもりはないが、「なんでもかんでも消費者に聞けばよい、消費者から教えてもらう」といった姿勢は、間違った顧客志向である。