先日、学生から「企業は新商品やサービスの開発にあたり、しっかりと消費者ニーズや競合商品などの調査を実施し、市場に投入しているはずだが、それでもなお失敗してしまうのはなぜか?」といった質問を受けた。つまり、「なぜマーケティングリサーチがうまく機能しないのか?」ということである。
以下、大ヒットとなっている「コスメデコルテ」のケースを通じて、マーケティングリサーチについて考えてみたい。
「コスメデコルテ」はコーセーが展開するハイプレステージ・ブランドで、同ブランドの美容液「リポソーム・アドバンスト・リペアセラム」が大ヒットとなっている。ご存じの方も多いだろうが、この商品の広告モデルはロサンゼルス・エンゼルス所属の大谷翔平選手だ。
とりわけワールドベースボールクラシック(WBC)で神がかり的活躍を見せ、以前にも増して大きな注目を浴びる大谷選手を起用すれば、どのような商品でもヒットするだろう。つまり、コーセーは単に“運が良かっただけ”と偶発的な見解を示す方もいるかもしれない。
もちろん、そうした側面もあるだろうが、そもそもコーセーが大谷選手をグローバル広告モデルに起用すると発表したのは、昨年末のことである。また、女性が購買の主体となる化粧品という商品の広告モデルに男性、しかもスポーツ選手を起用するのは極めて異例のことだが、なぜコーセーにおいて実現できたのだろうか。