トランプ氏はこれに対してすべての起訴内容に無実を主張し、元ポルノ女優とも性的関係はなかったとしている。なおアメリカのいまの法のシステムでは特定人物が刑事的に起訴や有罪判決を受けても、大統領選挙に立つ権利は認められている。だからトランプ氏もたとえこんごの裁判で有罪となっても、2024年の大統領選候補であることには変わらないこととなる。
さて意外な反応の第一は一般有権者の態度だった。
トランプ氏の起訴が報道されると、すぐに各種世論調査でのトランプ氏の支持率が急速に高くなったのである。
ヤフー・ニュースの世論調査によると、共和党側で次期大統領選のトランプ氏は、対抗馬とみなされるフロリダ州のロン・デサンティス知事に対して3月中旬には47%と39%と、8ポイントのリードだった。ところが起訴の直後の同じ調査ではトランプ氏の支持率は57%へと跳ね上がり、31%のデサンティス氏に26ポイントもの大差をつけるにいたった。まさに急上昇なのだ。
同時にトランプ氏の選対陣営への選挙資金寄付が起訴後のわずか1日で400万ドルを記録した。そのままの3日間で700万ドルに急増したと発表された。しかもその寄付のうちの4分の1は初めての献金者たちからだったという。
また起訴への一般国民の意見としても、クイニピアック大学の最新の世論調査では、マンハッタン地区検事局によるトランプ氏への刑事捜査は「政治的動機」で進められていると思うと答えた人が共和党支持層で93%、無党派層で70%という結果が出た。同じ質問に対して民主党支持者たちも33%がイエスと答えたという。
第二は連邦議会の議員ら共和党政治家たちの反応である。
議会では下院の共和党ケビン・マッカーシー議長が「この検察の動きは民主党による司法機関の武器化だ」と言明した。上院でも同じ共和党ながらトランプ氏に批判も述べていたミット・ロムニー議員までが検察の起訴を「政治的な動きだ」と非難した。本来のトランプ支持のリンゼイ・グラハム上院議員にいたっては「この起訴は民主党の歴史的かつ組織的な共和党攻撃であり、国民多数の反発によりトランプ氏の大統領再選の可能性を高めた」と述べた。
連邦議会の上下両院でも共和議員は全員、この起訴への糾弾に同調し、賛意や理解を示す議員はまだ一人も出ていない。きわめて異例の超団結なのだ。
第三は法律専門家たちの反応だった。
共和党歴代政権で司法長官だったウィリアム・バー氏は「私は政治的にトランプ氏を必ずしも支持しないが、今回の起訴はニューヨークの州法を勝手に拡大解釈して連邦レベルに適用する点などあまりに無理が多い」として起訴を政治的行動だと批判した。