トヨタの主張の主な内容は、

400万台をすべて電動化(EV化)すると、夏場の電力ピーク時には電力不足になる。それを回避するためには原発を10基乃至は火力発電所を20基増設し、発電能力を10~15%増加させなければならない。 完全EV化には充電インフラの整備が必要で、その設備費は37兆円までになる。自宅でのアンペア調整に10~20万円、集合住宅なら50~150万円、急速充電機には600万円が必要である。 EVの生産段階で色々な問題が生じる。第一に、電池の供給能力を現在の30倍以上に強化しなければならず、そのために2兆円程度の投資が必要になる。また、EV完成時に行う検査で必要とされる電力は、EV1台当たり1住宅1週間分に相当する。

つまり、生産から電動化を支える電力体系まで、本質的かつ大きな課題があることを指摘したのであり、あれから約3年後の現在、これらの課題に対してどれほどの進展が見られたのであろうか?

国連やWEFが主導する輸送手段の電動化は、CO2が温暖化の主要原因であるという話を前提としたものである。気候変動と気候科学について、国連は、WEFのSustainable Development Impact Meetingsの場で、以下のような政治的な発言を行っている。

UN Secretary for Global Comms says we “own the science” on “climate change,” and we think that “the world should know it.”

真っ当な科学者の発言とも思えないが、彼らは「気候科学を支配するのは国連であって、下々はそれに従っていればいい」といった非常に傲慢な姿勢を見せている。

こうした国連やWEFの指令に唯々諾々と従う必要はないはずだが、我が国の政府や官僚の発言や行動を見ていると真逆の動きを繰り返しているようにしか見えない。

合成燃料(e-fuel)とその課題

さて、e-fuelであるが、CO2とH2を原料とし、Fischer-Tropsch(FT)合成技術を利用して製造する燃料のことで、FT技術は、1920年代のドイツまで遡ることができる。FT技術は、合成ガス(石炭や天然ガスの熱分解や改質で得られるCOとH2を主成分とするガス)から輸送用の炭化水素系燃料や各種化学品を合成する技術であり、爾来、新規の触媒や反応器の開発などを通じて、技術的にも大幅に改善されてきた。

つまり、FTプロセスは、合成ガス中のCOとH2を触媒反応させることにより、分子量分布をもった炭化水素を製造する技術である。

n =1の場合はメタンに該当するが、FTプロセスは高分子量炭化水素液体燃料の製造を目的として条件選定が行われる。触媒、温度、プロセスの違いによって、メタンから高分子量のオレフィン、パラフィンまでの幅広い燃料が製造される。FT合成反応は、理論的にはCOの縮合重合である。