「Fox」と同じマードック傘下の「Wall Street Journal」は1月、「ワクチン接種を受けなかった人を含め、大半の米国人は一般的にワクチンに不信感を抱いていない」とのラスムセン調査を引き、「『専門家』がワクチンへの不信感を煽っている」との記事を載せているから、ビッグファーマの敵はマードック家というよりは、カールソンなのだろう。
だが「Fox」のアンカー如きをビッグファーマや巨大ファンドが相手にするだろうか、との疑義がある。つまりオーナーのマードック家に圧力を掛けてまでカールソンの放逐を図るだろうか、との疑問だ。というのも、カールソンは「消された」訳でなく、今後の身の振り方さえ注目されているからだ。
前出の「ブルームバーグ」は、カールソンの年棒は1000万ドルを超えるが、彼の人気を踏まえれば、同じ保守系メディアの「Newsmax」や「One America Network」が秋波を送る可能性があると報じている。つまり、「Fox」から追い出したところで、彼の口は塞げないということ。
では「Fox」関係者やマードック傘下の姉妹紙はどう見ているのだろうか。先に「Fox」を出されたかつてのライバル、ビル・オライリーの見立ては、「Fox」がカールソンを「手放すべき避雷針と見做した」というもの。それには解雇直前に「Fox」がDominion社とした7億8750万ドルの和解が絡む。
その辺りを26日の「WSJ」が詳説している。それは、カールソンと上級幹部(彼が「c-word」で呼んだ、とあるので恐らくスザンヌ・スコットCEO)との確執、「陰謀説の主唱者であるシドニー・パウエルについて懐疑的な声を上げていた」カールソンと幹部の報道姿勢との齟齬、Dominion事件を彼の責に帰す社の傾向などだ。
オライリーが指摘する、カールソンが誘引し「Fox」が抱えた訴訟は他にも、これも先の大統領選に係るSmartmatic社との26億ドルや、J6暴動で連邦政府に協力した工作員とされたレイ・エップスによる訴訟などがある。但し、カールソンの放逐で「Fox」が無罪放免になるかどうかは定かでない。
ルパート・マードックの故郷の傘下メディア「Sky news Australia」は、長男のラクラン・マードックが「(カールソンは」自分がFox Newsより大きな存在だと考えたため本質的にクビになった」と報じている。同局キャスターのアンドリュー・ボルトは、切ったのは父ではなく長男が一存だ、と。