第1子に1千万円支給すべき
ただし、現在の「異次元の少子化対策」には、出生対策が見当たらないという点では小黒教授とは見解は一致しているし、金銭面から子どもを持てない層に出産を促すには「出産育児一時金」が効果的だという点でも見解は一致している。
異なるのは、小黒教授は恐らく財源の問題を考慮して「第3子以上」としているところ、筆者は第1子の出生に1千万円を支給すればよいと考えている点だ。
なぜ、第1子への1千万円支給かといえば、まず、先の寄与度分解のグラフからも明らかなように、少子化は第1子の減少で進んでいることにある。そして、第1子に1千万円支給すれば、最初の1人の子どもの子育て費用3千万円中の1千万円が解消されることになるので金銭的に困っている世帯でも第1子を持てるようになるからだ。
さらに、元々金銭制約で第1子、第2子までしか考えてなかった人たちも、ドミノ倒しで第2子以降を持てるようになるだろう。そして子どもを一人でも育てる世帯を増やすメリットは子育て中の世帯を増やすことで子育てへの社会の理解を広げられることにもある。
現在、子育て中の世帯(児童のいる世帯)は全体の20.7%であるのに対し、65歳以上の高齢者がいる世帯は全体の49.7%となっている。これでは「香川県まんのう町の交流施設『ことなみ未来館』」の例を見るまでもなく、高齢者の難癖ともいえる「苦情」が子育て中の世帯を追い込むにことになるのは火を見るよりも明らかだ。
問題は、第1子への1千万円給付は財政的な負担が大きいことにあり、100万人では10兆円の財源が必要になる。
財源は、高齢者自己負担の原則3割への引き上げなど高齢者向け社会保障給付の効率化や、保育所の整備が進み待機児童もほぼ解消されつつあることなど子育て対策の見直しを含め、既存施策の歳出削減などで賄うのが適切だ。さらには200兆円にも及ぶ年金積立金やその運用益の活用も考慮すべきだろう。
いずれにせよ、岸田総理が「異次元の少子化対策」を掲げるのであれば、出生増に政策資源を思い切って割り当てる必要があるだろう。