ドライバーズHVに大変身したプリウス。ゴルフは、やはりクラスのベンチマーク

プリウスのシリーズパラレルHVは、過去にはラバーバンドフィールをはじめドライバビリティ面の課題を指摘されることが多かった。「Hybrid Reborn」を掲げる最新版は、それらがかなり払拭されている。

第5世代を迎えたHVシステムは、新設定の2リッターがなかなか美味だ。1.8リッター仕様(KINTO限定販売)でも大きな不満はないが、全域で走りの余裕を実感する。俊敏なレスポンスを実現しているとともに伸びやかに加速し、アクセルを踏み増しても頭打ちにならない。排気量から想像するよりも差はずっと大きい。

ゴルフTDIのドライブフィールも逞しい。ひと世代前は、ディーゼルの美点であるトルクフルな走りを味わえたものの、音や振動は大きめ。DSGとの相性も若干ギクシャク感があった。現行型は、車内にいるとディーゼルかどうかわからないほど静かで振動も気にならない。DSGとの相性も上々である。

ドライバビリティは、大きく改善された。レスポンスが大幅に向上し、低い回転域から最大トルクと最高出力を引き出すチューニングが心地いい。欧州では「ディーゼルはもう過去の技術」扱いになったと思っていた。しかし、こうして完成度の高い最新モデルに触れると、まだまだ可能性があると感じる。

優れたシャシー性能もさすがゴルフ。どんなシチュエーションでも乗りやすく快適で操縦安定性にも優れている。申し分ない。

【世界基準対決】ともにクラスの牽引車。トヨタ・プリウスとVWゴルフの完成度を改めて比較した
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【世界基準対決】ともにクラスの牽引車。トヨタ・プリウスとVWゴルフの完成度を改めて比較した
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

対するプリウスは、ぐっとポテンシャルが高まったことに驚いた。TNGAを初導入した旧型も走りはよかったが、そこからまさにジャンプアップしている。低重心化とワイドトレッド化、ホディとステアリング系の剛性向上により、快適な乗り心地を維持したまま、気持ちのいい走りを実現。とくに操舵応答性のよさは印象的である。

E-Fourの仕上がりにも大いに感心した。ゴルフは別格的なRグレードでないと4WDの設定がないが、プリウスには旧型から4WDがラインアップされている。

新型はリアに一段と強力なモーターを配したことで、瞬発力のある発進加速を実現。それをハンドリングにも活用している。従来は滑ったときに限って後輪がアシストしていたが、新型は旋回時にも積極的に後輪を駆動するという。

走ってみると、2WDとのハンドリングの違いは明確。小さな舵角で旋回できて、リアが遅れなくしっかりと追従する。より意のままに走ることができる。

降雪地のユーザー以外でも、プリウスを選ぶなら「走りの気持ちよさ」という点でE-Four(価格はFF比22万円高)を推奨したいと思ったくらいだ。

ベンチマークであるゴルフの場合、世代ごとに極端にコンセプトを変えることはなかなか難しい。だがプリウスなら、それができる。5代目は、いろいろな方向性を考えたうえで、「ユーザーに愛されること」を積極的に目指した。その選択を、大いに歓迎したい。

【世界基準対決】ともにクラスの牽引車。トヨタ・プリウスとVWゴルフの完成度を改めて比較した
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)
【世界基準対決】ともにクラスの牽引車。トヨタ・プリウスとVWゴルフの完成度を改めて比較した
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

トヨタ・プリウス主要諸元

【世界基準対決】ともにクラスの牽引車。トヨタ・プリウスとVWゴルフの完成度を改めて比較した
(画像=『CAR and DRIVER』より引用)

グレード=Z(FF)
価格=THS 370万円
全長×全幅×全高=4600×1780×1430mm
ホイールベース=2750mm
トレッド=フロント:1560/リア:1570mm
車重=1420kg
エンジン=1986cc直4DOHC16V(レギュラー仕様)
最高出力=112kW(152ps)/6000rpm
最大トルク=188Nm(19.2kgm)/4400〜5200rpm
モーター最高出力=83kW(113ps)
モーター最大トルク=206Nm(21.0kgm)
WLTCモード燃費=28.6km/リッター(燃料タンク容量43リッター)
(市街地/郊外/高速道:26.0/31.1/28.2 km/リッター)
サスペンション=フロント:ストラット/リア:ダブルウィッシュボーン
ブレーキ=フロント:ベンチレーテッドディスク/リア:ディスク
タイヤ&ホイール=195/50R19+アルミ
駆動方式=FF
乗車定員=5名
最小回転半径=5.4m