コロナ禍では積極的にテレワークを導入する企業が多かったものの、規制緩和などにより勤務スタイルをもとの「出社」に戻す企業が増えてきました。

それに伴い、オフィスでは対面での打ち合わせ機会が増えており、オフィス来訪者数もコロナ禍前のように復調しているといいます。

そこで今回は、年間200万人が利用する受付システム「RECEPTIONIST」を提供する株式会社RECEPTIONISTの代表取締役CEO 橋本真里子氏に、今後のオフィス課題について寄稿していただきました。

「やはり出社が大事」と感じる企業が国内外に増えた

パンデミックが落ち着きつつある2023年。Apple、Twitter、Amazonなどの海外の大手企業は、社内コミュニケーションの活性化やイノベーションを目的として社員に出社を求める発表を行いました。

これは海外に限られた話ではなく日本においても同様です。本記事をお読みになっている人の中には、TVニュースで表示されるターミナル駅の様子や自身の勤務スタイルから「元通り」を実感している人もいるのではないでしょうか。

出社比率の回復に伴い、受付業務が以前と同じように行われるようになった今、注目を集めているのが“受付システム”です。

私たちが提供する「RECEPTIONIST」は、オフィスのエントランスに置かれたiPad上で受付・来客の取次を行うクラウド受付システムです。

ゲストは内線電話の代わりに置かれたiPadのタッチパネルやQRコードを読み込むことで、担当者を呼び出します。社内ではビジネスチャットやアプリを通して本人に直接通知される仕組みです。

受付から受電した本人でない総務や同じ部署の人が、代理で対応する無駄な時間を割きます。

また、このシステムでは自動で来客の履歴を保存することが可能です。今回は、この利用データや最近の導入傾向を読み取ってわかった、「ここ数年で世の中が受付に対してどう向き合ってきたか」を解説します。

2020年、緊急事態宣言下のオフィスの来訪者は8割減

新型コロナウイルス感染症(以下、コロナ)の拡大は、ビジネスにおける“人同士の対面”に大きな影響をもたらしました。

2020年4月から5月の緊急事態宣言の間、「人と人の接触を8割減らしましょう」という政府の進言通り、WEB会議が一気に広まり、当社の提供する受付システムを導入する企業の利用回数が8割減少しました。

しかし、実際に受付導入企業のうち「来客が1ヶ月に1度もなかった」企業は約1割。外部との商談や打ち合わせがWEB会議に移行しても、実際には配送業者や定期的に出入りするメンテナンスの業者などの来客がなくなるわけではなかったことがわかっています。

2021年はオフィスの再構築とともに受付の見直しが広まる

コロナがすぐに収束しないとわかると、企業は「安全にオフィスを運用するには」という考えに移行しました。

「出社には徐々に戻していきたいけれど、来客は減っているので今までの受付担当者にかけていたコストが適切なのか」

「受付に置かれた内線電話は不特定多数の来客者が使うが、コロナ禍では不衛生といえるのではないか」

「どうしたら従業員もお客様も安心してオフィスに戻って来れるか」

という疑問が新たに生まれ、今までは「内線の取次をする社員の負担を減らしたい」という現場目線だったものが、受付にかかわる人以外、ついには経営層にも注目されるものへと変化しました。

テレワークと出社を使い分けるハイブリッド勤務が広まることで、オフィスレイアウトの変更や内装のリニューアル、オフィスの拡張・縮小などの再構築も広まりました。

フリーアドレス化が進んだことも後押しになり、「内線電話を用いない受付」がオフィス構築と同時に検討されるようになり、大手企業からの問い合わせが増えました。

2022年の受付システム利用回数はコロナ前の水準に

さきほど「受付の利用回数が減った」とお伝えしましたが、2021年以降は徐々に来訪が戻り、2022年の1社あたりの平均利用回数が92.7%と、コロナ以前とほぼ同水準となっています。

ハイブリッドワークが普及しながらも、事業の成長やコミュニケーションを求めて徐々に出社日を増やす企業が増加している中、それに伴い対面での打ち合わせ機会も増えたことで、オフィス来訪者数が復調しているとわかります。

さらに、2022年の受付システム全体の年間利用回数は200万回を突破し、コロナ前(2019年)の120万回弱から大きく伸長しました。すでにRECEPTIONISTを導入している企業の対面機会が復帰したことに加え、新たにシステムを用いた受付体制を構築する企業が増加したことが要因です。