地道なホームタウン活動の行く末は
クラブ数が増加したことで、優勝争いとともに昇格・残留争いが激化。加えて、全体的な予算規模も拡大しているJリーグ。一方で、拡大路線と相反する「地域との共生」が深化していることは興味深い。昨今、同じ都道府県に複数のクラブが存在するケースも珍しくなく、本拠地を指す「ホームタウン」内の盛り上がりも見られる。
Jリーグは「ホームタウン活動」を重要視し、規約には「Jクラブはホームタウンと定めた地域で、その地域社会と一体となったクラブづくりを行いながらサッカーの普及、振興に努めなければならない」と記されている。つまりはサッカーの競技活動だけでなく、欧州でよく見られる「総合型スポーツクラブ」を目指すクラブが増加しているのだ。
例えば、J1の湘南ベルマーレは、2002年に「特定非営利活動法人湘南ベルマーレスポーツクラブ」を設立し、ビーチバレーやトライアスロン、フットサルなどのチームをサポートしている。J2の東京ヴェルディも2018年「一般社団法人東京ヴェルディクラブ」を設立し、ビーチサッカーやeスポーツなどをサポート。その他にも、横浜F・マリノスらが同様の試みをしている。
2022年に報告されているホームタウン及び活動区域内での「ホームタウン活動」は、全クラブ合計で23,573回。1クラブで平均406回も活動しており、地域密着を超えた「地域との共生」が各地で進行している。
サッカー至上主義でなく、地域と共生することでその地に浸透した太い根は、やがて太い幹となり多種多様な枝葉を付け、いずれはトップチームの強化にもつながることだろう。30周年を迎えたJリーグの成長は、決して爆発的とは言えないが、地道かつ真摯な姿勢は今後の日本サッカー界を更に大きく強くしてくれると信じている。