ブームの陰りと定着

「ブーム」とは、往々にして長く続かないものである。Jリーグ開始から2年後の1995年には、ゴールデンタイム(19~22時)のテレビ中継がなくなり、さらに2年後、実際の観客数も1試合平均17,976人から10,131人へと減少。Jリーグブームはあっさりと終焉を迎えた。

それでも、チーム数の拡大など「ブーム」から「定着」へと舵を切り、地道な活動を続けた日本サッカー界。その追い風となったのは、日本がフランスW杯の本戦初出場を手にした「ジョホールバルの歓喜」と称される試合だ。

1997年11月16日、W杯アジア最終予選である第3代表決定戦イラン代表との試合は、日本時間の深夜に開催されたにも関わらず平均視聴率は47.9%を記録。延長戦の末のゴールデンゴール(3-2)で勝利した日本代表は、アジア予選初出場から実に43年を経て、悲願のW杯出場を決めた。以降、2023年の現在まで7大会連続出場を決め、今ではW杯常連国の1つとなっている。

横浜F・マリノス FWアンデルソン・ロペス 写真:Getty Images

身近な存在になったJクラブ

2023年現在、JリーグはJ1、J2、J3の3部制を備え、計60のクラブが所属。41都道府県に拠点があり、Jクラブがない6つの県にもJリーグを目指すクラブが存在している。1部制8府県の10チームからスタートしたJリーグ。30年が経過した現在、合併消滅したクラブは横浜フリューゲルスのみ(1999年マリノスと正式合併して消滅)。他国と比較しても安定感は突出している。

生まれ育った土地、進学や就職で移り住んだ土地など、各地にプロのサッカークラブがあることは「おらがまちのクラブ」という意識を生みやすく、スポーツを通じて「郷土愛」「地元愛」「地域のプライド」を感じる人の増加につながっている。

J2、J3リーグでプレーしていた選手が日本代表入りするケースも珍しくない近年、Jリーグから欧州など海外クラブに移籍する選手も増加傾向にあり「おらがまちのクラブ」で活躍した選手が世界で戦う姿を親戚のような気持ちで見守ることも、サポーターの楽しみとなっている。


川崎フロンターレ MFチャナティップ・ソングラシン 写真:Getty Images

他国からも注目される存在に

Jリーグは視点を世界にも向けており、2023シーズンでは中国、タイ、インド、ネパールなどアジアの国々に加えオーストラリア、ドイツ、スイス、ガーナ、ナイジェリアなど、さまざまな国で試合が放映されている。

スポーツデータサイト『Opta』のパワーランキングによると、J1リーグは平均的なチーム力に基づくアジアのリーグランキングで1位。J2リーグも8位に入っており、非常に高い評価を受けている。突出したクラブがないことからアジアチャンピオンズリーグ(ACL)での戦績は芳しくないものの、どこが優勝するか降格となるか予想がつかない点は欧州のトップリーグにはない魅力だろう。


Jリーグ旗 写真:Getty Images