できるだけ計画通りに1日を進める山田の場合

山田は出社して朝一番にその日の仕事の段取り・計画を考え、できるだけ計画通りに1日を進めることを心がけていた。

仕事に集中している時に部下から相談されると至急の時を除き、こちらからあらためて声をかける旨伝えた。上司や取引先から仕事を頼まれると「いつまでにやればいいですか?」と確認した。至急の時以外は翌日以降取り組んだ。

電話がかかってきても忙しい時は応答しない時もあった。大切な仕事に取り組んでいる時は携帯を機内モードにする時もある。メールやチャットは原則10時と16時にチェックしてまとめて返信をした。

山田の仕事ぶりは同僚や取引先から仕事が早いと上々だった。山田自身も自分の働き方に満足していた。

佐藤と山田の仕事ぶりには一つ、決定的な違いがある。イギリスで画期的なタイムマネジメントの書としてベストセラーになった本にそのヒントが書かれている。紹介したい。

「突発の仕事」への対処が違いをもたらす

仕事が予定通り終わらない一番の理由について『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則(ディスカヴァー・トゥエンティワン 2016)』には以下のように書かれている。

「今日やろう」と決めた仕事がその日に終わらないのはなぜでしょうか?一番の原因は「邪魔が入ること」つまり、突発の仕事が予定に入り込むからです(引用: 同上)

佐藤と山田の仕事ぶりの決定的な違いはこの「突発の仕事」への対処の仕方にある。

山田は突発の仕事に対し至急の時はその場で応じるものの、そうでない時は自分の計画通り仕事を進めることを心がけていた。一方佐藤の仕事の進め方は一言で言えば場当たり的だ。突発の仕事が入れば常に自分の仕事を中断して対応している。

突発の仕事が入ることは避けられない。しかし真に今すぐ対処しなければならない場面は限られているはずだ。先程引用した書籍にも、今すぐ対応が必要なのは特殊な職業と本当に緊急の仕事だけと書かれている。突発の仕事に対する対処については山田の仕事のやり方が合理的なのだ。

頭では理解できても、そう簡単に割り切れない。あるいは具体的にどうすればいいのかわからない。そう感じる読者もいるかもしれない。

そんな読者にははじめの一歩として「マニャーナの法則」の活用をおすすめしたい。説明しよう。

「今日受けた仕事は原則明日以降に取り組む」をルールに

マニャーナとはスペイン語で明日という意味だ。先程も紹介した『仕事に追われない仕事術 マニャーナの法則』には、マニャーナの法則について次のように書かれている。

「マニャーナの法則」の根底にあるのは「明日まで待てないほど、緊急な仕事はない」という考え方です。ポジティブに表現すれば「1日に発生する仕事を集めて、必ず次の日にやる」と言い換えられます。つまり、常に仕事に1日分の「バッファー・ゾーン」を設ける考え方なのです

この法則はシンプルに言うと「今日受けた仕事は原則明日以降に取り組もう」ということだ。

たとえば上司や取引先からあらたな仕事を受けたら、すぐできる仕事や気になる仕事でも翌日以降取り組む。これをルールとする。そうすると突発の仕事に対処する時間が最小限ですむ。これがこの法則を活用するメリットだ。

では具体的にどう実践したらいいのか。筆者がマニャーナの法則に出会った頃に実践していたやり方をここで紹介したい。

突発の仕事を仮置きする「箱」を用意する

筆者は会社のデスクにトレイのような箱を一つ用意し、今日あらたに発生した仕事はそのトレイに入れるというルールを設けた。

上司や部下から仕事の依頼を受けたら、急ぎでないことを確認してトレイにその仕事に関連する書類を入れた。取引先から電話で仕事を依頼されたら仕事の内容を忘れないようにメモを書き、トレイに入れた。メールで仕事の依頼が来た時もそのメールを印刷してトレイに入れた。

トレイにある仕事は翌日以降取り組めばいい。1日の終わりに取り組む日付毎に整理して退社した。

マニャーナの法則の良いところは実践が簡単で、すぐに効果が出ることだ。筆者もすぐに自分のペースで仕事を進められるようになった。

以前は仕事や他人に流されて仕事をしている感覚だった。しかし「今日受けた仕事は原則明日以降に取り組む」と決めると、突発の仕事に取られる時間が最小限ですんだ。以前と比べて格段に自分の計画通りに仕事を進められるようになった。

今日受けた仕事は原則明日以降に取り組む。このシンプルなルールを守るだけで、突発の仕事への対応に要する時間は驚くほど減るはずだ。

他人を大切に思う気持ちは大切だ。しかし自分が溺れていては他人を助けることはできない。マニャーナの法則を活用してぜひ活路を見出してほしい。