スペインにRUMASAという銀行を抱えた企業グループがあった
日本円という自国国債だから財政破綻しないという推論の無理についてひとつ具体例を挙げることにする。
1961年にスペインでRUMASA(ルマサ)という企業が誕生した。創業者はホセ・マリア・ルイス・マテオ氏で、アンダルシア地方のへレス・デ・フロンテラ市で父親がシェリー醸造所を経営していた。彼はこの事業を土台にして事業を拡大。1970年代にはスペインでRUMASAの傘下にある企業は400社を数えるまでに成長。全社の従業員は6万人を数え、スペインのGDPの1%を担う企業グループに成長した。このグループ全体の年商は3500億ペセタ(20億ユーロ)。
この企業グループで彼が築き上げた「妙案」は、このグループの中に27行の銀行を加えたことだ。地方の中堅銀行を彼の傘下に入れたのである。その中で最大の銀行はバンコ・アトランティコであった。それ以外にホテル、ワイナリー、総合デパート、食品、薬品、化粧品、建設、不動産などの会社が存在していた。スペイン代表のファッションブランドとして世界的に知れているロエベ(Loewe)もその傘下に加わっていた。
筆者が言及した「妙案」というのは、彼の傘下の企業のメインバンクは常にこの27行にさせたのである。即ち、資金操作、融資、手形割引などでこの27行が協力したのである。そして取引も400社の中で出来るだけ多くさせて、在庫調整でもグループ企業内で実施。実際には赤字経営でもグループ銀行の支援もあって黒字に転化させていた。
しかし、経営不振を隠せないところがあった。社会保障費のグループ全体でユーロにしておよそ6500万ユーロ(78億円)、税務署への未払金(従業員の所得税など)が1億1600万ユーロ(140億円)などが滞納金として存在していた。また、スペイン銀行が要求していた会計事務所からの監査も拒否し続けていた。このグループの企業が正常に機能していれば、良い企業だというイメージを維持すべく公的機関への滞納金も存在していないはずだし、監査も受け入れていたはずであった。(Rumasa ウィキペディアから引用)。
スペインで社会労働党政権が誕生した3か月後の1983年2月に政府はこの企業グループの経営不振はスペイン経済に多大の損害をもたらすとしてRUMASAを政府が押収したのである。それは違法であるという意見もあったが、最終的に憲法裁判所が押収は合法であるという判決を下した。
アーサーアンダーソンが監査した結果、グループ全体の負債総額はユーロにして15億ユーロ(1800億円)という結論をくだした。今から40年前の出来事であった(3月13日付「ABC」から引用)。

ホセ・マリア・ルイス=マテオス氏