先ほど維新の馬場幹事からも紹介があったとおり、先週3月30日、日本維新の会、国民民主党、有志の会の3つの会派で、緊急事態条項のうち議員任期の延長に関する条文案について合意を得た。条文案の中身も本審査会での議論を踏まえたもので、憲法改正に向けた現実的かつ合意を得やすい内容になっていると思う。今後、当審査会における成案づくりのたたき台としてご議論いただき、他の会派の皆さんとも丁寧に合意を得ていきたい。
内容については、先ほど馬場幹事から説明があった通りだが、そのうち「選挙実施困難要件」と「前衆議院議員の身分復活」について私から補足説明し、立憲民主党の奥野委員と、前回お答えいただけなかった篠原委員に改めて質問したい。
まず、私たちが「選挙の一体性が害されるほど広範な地域において国政選挙の適正な実施が70日を超えて困難であることが明らかな場合」に延長を認めることとしているが、逆に言うと、70日までは可能な限り参議院の緊急集会を活用しようとする趣旨である。決して緊急集会を蔑ろしにしたり、権限の縮小を企図したものではない。
また、長谷部恭男先生などが認めている、緊急集会が解散時のみならず任期満了時にも開催できることを条文上明記し、解釈論争に結論を出していることは前回も説明したとおり。このことで、「一時的・暫定的・限定的」な対応は「緊急集会」、70日を超えるような長期にわたる場合は「任期の特例延長」という形で、両者の棲み分けを条文上、明確にしている。
佐藤功先生の学説でも「緊急集会制度は両院性の国会に対する極めて特殊な場合の異例的・変則的措置」ともされており、また、「緊急集会制度には濫用の危険もある」ともされている。さらに、高辻正巳元法制局長官は、条約締結の承認については、衆議院の同意を欠けば承認の効力が失われる以上、当該条約の法的地位を安定化することにならず、かえって相手国との信頼関係を損なう恐れがあり、緊急集会の措置としては馴染まないものとしている。
この論点に関して、奥野委員は前回の審査会で、公選法が規定する繰延投票での国会議員の延期延長はできないと思っていると明言された。また、解釈や国会法等の改正で対応できないことが明確になれば、我々も議員任期の延長を議論すべであり、議員任期の延長をするということになれば憲法改正は自明であるとも発言された。前向きな発言であり、ぜひ一致点を見出したい。今後、緊急集会で対応できる範囲、できない範囲、法改正でできる範囲、できない範囲を明確にするための議論に積極的に加わっていただきたい。
なお、こうした奥野委員の発言は、立憲民主党全体の考えなのか改めて確認したい。というのも、昨日、参議院の筆頭幹事である杉尾議員は「私たち会派は明確に反対」と断言している。