現地住民とNFTを購入した支援者の交流にDiscordを活用

カルング村の小学校に建てられたトイレ

住民主体のまちづくりを実現するために、Savanna Kidz NFTプロジェクトではカルング村の現地住民とNFT購入者、そして運営側の奇兵隊とが直接コミュニケーションを取ることができるオンラインコミュニティをDiscord上で作成しました。

現地住民とNFT購入者はそのオンラインコミュニティ上で、日常的な会話を楽しみ、運営やプロジェクトの内容に関するアイディア出しを行い、Snapshotという分散型投票システムを使用して、実行に移すプロジェクトを決める投票を行いました。

その結果、日本円にして約500万円以上の資金が集まり、現地住民とNFT購入者による投票を経て、2022年5月には45世帯の村人が綺麗な水にアクセスできる15基の雨水貯水タンク、同年10月にはコンクリート製の教室2部屋とトイレなどの建設が実現しました。

さらに、これらのまちづくり施策では、工事の作業員としてカルング村の住民も採用し、村に新たな雇用を生み出すきっかけにもなりました。

国際協力の課題をスマートコントラクトの導入で解決

現行の国際協力分野における課題を鑑みて、Web3技術を取り入れることが重要だと私は考えています。

たとえば、従来の中央集権型の国際協力では、以下のような課題が存在します。

1.資金の使途やプロジェクトの進捗状況が不透明な場合が多い

2.寄付を集める運営者や仲介者が不正行為を行ったり、システムがハッキングされたりするリスクがある

3.手続きの複雑さや時間がかかる

4.資金調達方法で、書類の準備や審査、契約手続きなど、煩雑なプロセスが必要となり、効率性に欠ける

これらに対し、スマートコントラクトを活用すると効果的に対処することができます。

スマートコントラクトはブロックチェーン技術をベースにしており、取引履歴や資金の使途が分散型の台帳に記録されることから、透明性や信頼性を高めることができるのです。

たとえば…

1.スマートコントラクトの導入により、資金の寄付者や受益者がいつでも情報にアクセスでき、資金の用途やプロジェクトの進捗に関する透明性を保てる

2.スマートコントラクトを導入すると取引が自動的に実行されるため、運営者や仲介者が不要となり、情報操作や不正行為のリスクが低減され、信用性が高まる

3.スマートコントラクトは分散されたネットワークによって構築されたシステムなので、個別の機関に問題が生じた場合でも、システム全体が危険にさらされるリスクが低い

このように、国際協力分野にスマートコントラクトを導入することで、よりスムーズに支援を行うことができます。

一方で、現状のWeb3の業界では詐欺や不正な行為が横行しており、技術自体もまだまだ黎明期であるため、非常に使いづらいものになっています。

業界全体での健全化や適切な法規制、技術に関しても多くの人に使いやすいシステム、UXの改善が必要なことはいうまでもありません。

しかし、このような新しい技術が登場した際に毛嫌いすることなく、いかに活用できるか考え、実際に使ってみるといった姿勢は非常に重要なことだと考えます。

後編では、Web3技術を活用した地域活性化の可能性についてご紹介します。

<著者プロフィール>
阿部遼介(あべりょうすけ)
株式会社奇兵隊CEO

1982年生まれ。
2007年国際基督教大学卒業後、アクセンチュア株式会社入社。
アクセンチュアでは3年間にわたり、金融機関、官公庁、化学メーカー、新聞社などの顧客に対して、新規事業立ち上げ支援、業務改革、BPO 立ち上げ支援など複数のプロジェクトに従事。

2011 年株式会社奇兵隊の代表取締役に就任。
奇兵隊の代表取締役として、会社全体の事業戦略の策定、資金調達、採用及びサービスのマーケティング全般を管掌。奇兵隊の従業員の出身国は10カ国以上にもわたり、多国籍メンバーで構成されたチームを率いる。