「非日常的な世界観」の提供は成功した?
開始当初は山原(ヤンバル)の美しい景色を強調した演出が光っていました。スタートが初夏ということもあって本当に惹きつけられる映像表現でした。

映像は景色が美しければ勝手に美しくなるものではなく、その美しさを更に美しく伝えるには相応の技術が必要です。
また、舞台が銀座や鶴見に移っても上手にその「味わい」を見事に絵として収めていました。素人の目線に過ぎませんが、景色としては非日常の提供に成功しているように思えます。
最近は映像制作に興味をもつ方も増えてきています。そういう方には、見事な映像制作の舞台裏に思いを馳せることも非日常を楽しめるポイントと言えるでしょう。
また、魅力的な子役や若手、実績豊かな往年のスターまで、素敵な俳優さんが次から次へと登場します。みなさん本当にお上手で存在感がありますね。
素敵な俳優さんは画面中央にいるだけで「絵」になります。この絵だけでも非日常の世界観としては十分です。
特に若手スターをよく知らない50代、60代、70代の方々にとっては、自分たちの青春時代を思い起こさせる「青春スター」が登場しますね。それも、自分たちと同じように齢を重ねた役で登場するのです。
このように「非日常」という意味では、「映像表現」でも「配役の妙」でも、各年代の魂を揺さぶるものだったと言えるでしょう。
世界観への共感とコミットメントは?
一方で、時代考証の問題が数々指摘されています。現在、ネット上には数限りないツッコミが溢れていますが、すべては時代考証の問題から始まった印象もあります。
これらは視聴者の世界観への共感とコミットメントを損ねるリスクです。
実は人の脳には一貫性を求める仕組みがあります。心理学では「確証バイアス」「認知的な快」と呼ばれ、脳研究の分野ではドーパミン神経系の働きで説明されます。
過去を扱ったドラマでは「この当時は、そうだったよね!」と視聴者の一貫性の確認を維持する必要があるわけです。これに失敗すると、「認知的な不快感」を与えてしまいます。こうなると視聴者は「シラケる」のです…。
もっとも、全ての歴史を扱うドラマはこの難しさを抱えています。実際、全く「ツッコミどころ」がないドラマはまず無いでしょう。
ただ、NHKの朝ドラは注目度が高いので厳しく見られるのでしょうね。制作陣には悩ましいところかと思われますが、朝ドラの宿命のようなものなのかもしれません。