今回、逮捕された空軍州兵のケースでは印刷した紙を持ち出したが、エドの場合はUSBだった。ハワイの機密組織から持ち出すのは困難を極めた。USBやSDカードなど電子的な保存媒体の持ち出しは禁止。監視の注意を逸らすことで、没収、逮捕を免れた。
動機は簡単な「正義のため」「プライバシー保護」だった。彼は国家安全保障のために、ある程度までの盗聴などは許す。だから米国中から集まってきた天才の中でもさらなる秀才。その頭脳を生かしてNSAで仕事をしていた。
だがある日。自分のPCが誰かによってリモートでスイッチが入り、自身の私生活が覗き見されていることに気が付いて。米政府に反旗を翻した。

ウィリアム・ビ二―(右)
ウィリアム・ビ二―(写真、緑のシャツ)。NSA(国家安全保障局)で、技術担当をやっていた上級職の職員だ。映画「スノーデン」で、ニコラス・ケイジ演じる組織の主のような人物のモデルと言われる。映画でも技術アドバイザーを、実際にやった。
筆者に対しても素晴らしい実演を、オランダのアムステルダムでやってくれた。スノーデンが告発を決める切っ掛けになったこと。自宅に置いたPCのスイッチが入っていないのに、リモコンで”天の上” の誰かがスイッチを入れる。そしてPCの蓋部分の上部カメラを使い、映像情報を収集する。それが可能ということを実演してくれた。病気で足の切断という大変な障害を乗り越えて、筆者のためにやってくれた。
それ以降、筆者は自分のPCの上部カメラにガムテを貼って「目隠し」している。遠隔操作で誰かに勝手に私生活を覗かれたくないのは当然だ。
本当に衝撃的な驚きだった。
エド・スノーデンから頂いた日米の「諜報作戦」の詳細は、世界初のスクープ報道だった。エドは米国の機密情報をどこまで公開するか小生のようなジャーナリストに任せると言った。ウイキリークスのジュリアン・アサンジは、自分がジャーナリストで編集長。全部出すことを、自分で既に決めていると言ったのとは好対照だ。
筆者が例えば「日本の原発などテロ攻撃可能性がある場所などの情報は公開するべできはないだろう。テロリストが喜ぶだけ」と言った。ジュリアンは「いや大丈夫、被害は出てない」と否定した。
その時既に筆者は、日本原発の脆弱性を示す情報が出るのを知っていた。万が一の時は日本の半分が「地獄」になる。被害が出てからでは遅い。ジュリアンの言葉に筆者は首を傾げた。
エドの告発はあくまでも、プライバシー保護が主目的。安全保障の理由があろうがなかろうが、個人情報を米政府が入手して、もしかすると利用するかも知れないということは許せないというものだった。
詳細はまだ不明だが、今回の空軍州兵の漏洩やマニングの動機、自分が「いつも欲求不満になっている」「寂しい、相手にしてもらいたい」とか、友人仲間に「誇りたい」というようなものとは違う。
反論は当然あるが、エドの漏洩はかなり正当化できる。
さらにエドが言ったこと。collet all 全ての情報を入手する。NSA はなにかあれば大変なことになるとして、ほぼ全ての情報を入手する。個人の電子メールなども含まれる。
ドイツのメルケルの通話まで傍受していたと問題になった。一応、例えば five eyes アングロサクソン5ケ国に取り決めはあるが、同盟国でも、傍受し合うのは当然のことだ。
筆者はユタ州にNSAの超巨大機密施設があることを突き止めた。逮捕されるので、中に入って自分の目で見れなかったが、施設内のお化けサーバーをみれば、その気が遠くなるくらいのデータ量が理解できる。
今回の空軍州兵のケースでも指摘されている。米諜報は「やり過ぎ。収集し過ぎ」そして情報に接する人間の数も異常な数、その多くが世界をあまり知らない20代の若者。これが漏洩の主要因の1つだ。