越境は大胆であってはいけない

越境と聞くと、「新しい世界で挑戦」というイメージがあります。「やりたいこと(Will)」のイメージが先行します。しかし、やりたいだけではうまくいきません。「やれること(Can)」や「やらなければいけないこと(Must)」を考える必要があります。

若いうちはともかく、大人になったら「やりたいこと(Will)」だけで突き進む「大胆すぎる越境転職」はせず、計算された越境転職を実行してほしいと思っています。本人にとっても、受け入れ先にとっても、それが最良でしょう。

一見大胆に見えても、決して「大胆すぎる」訳ではなく、実は計算された失敗確率の低い越境転職が増えてほしいと思っています。

それでは、大胆すぎる越境転職と計算された越境転職の違いは何か?私の考えでは、「手順通りにチャレンジを積み重ねる」のか、「遠くにジャンプをするのか」の違いです。

境界線の越え方とも言えます。もう少し嚙み砕くと、自分自身の幅を広げるチャレンジを続ける中で、ステップで境界線を越えるのが、良い越境のイメージです。一方で、一気に境界線の向こうに辿り着こうと、大ジャンプを試みるのが、悪い「大胆すぎる越境」です。

今回の寄稿では、HRの専門家のような話ではなく、私自身の越境転職を振り返ろうと思います。慎重過ぎて越境に踏み出せない人や、大胆過ぎて「やりたいこと(Will)」が先行してしまう人のお役に立てればと思います。

越境転職のセオリーを考える

それでは、まず「手順通りにチャレンジを積み重ねる」の「手順通り」とは何か?という内容から解説します。

転職には、新しいチャレンジの要素が伴うものです。つまり、リスクが伴います。

私のような慎重派は、そのリスクをできるだけ減らしたいと考えます。「成功確率を上げるためには何をしたら良いのか?」と考えていたその時、新規営業のセオリーが転職のセオリーに応用できると気づきました。新卒で入った会社で教わったことです。

新規の売上を作ろうと思ったら、方法は2つだと教わりました。

A:新しい市場に、今の商材を売る
B:今の市場に、新しい商材を売る

この2つこそが、新規の売上を作る方法だといいます。

C:新しい市場に、新しい商材を売る

これは駄目。Cがどんなに魅力的に見えても、そこには自社の優位性がないからだと。

この、 「(上か横の)隣のマスしか進んではいけないルール」は、振り返ると、私のキャリア形成においても、しっかり考えが染み付いていることが分かります。

ここで、私のプロフィールを紹介したいと思います。
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新卒で入ったプロモーション会社で上場を経験。2014年、沖縄に移住、創業50年の印刷会社へ。経営改善に取り組み、新事業として街づくり会社を立ち上げ。地域課題をビジネスで解決するべく地域産業のプラットフォーム施設を運営。創業支援認定機関としての活動や、内閣府の地域プロデューサー育成プログラムを受託するなど、主に産業分野の地域活性化事業を推進。

2020年7月、内閣府沖縄総合事務局に入局。これまでの、ベンチャー⇒上場企業⇒町工場⇒ソーシャルビジネスの経験を活かし、プロデューサー型公務員として、沖縄振興に取り組む。
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慎重派の私の、「隣のマスしか進んではいけないルール」を解説します。

隣のマス① 東京のプロモーション会社から、沖縄の印刷会社へ。
【新市場/既存商材】新市場…プロモーションを武器に沖縄の市場に入ります。

隣のマス② 沖縄の印刷会社で、プロモーション企画から経営企画へ。
【既存市場/新商材】新商材…中小企業経営という新たな武器を身につけます。

隣のマス③ 印刷会社の新事業で、街づくり会社を立ち上げ。
【既存市場/新商材】新商材…会社の立ち上げ経験と、地域振興を学びます。

隣のマス④ 街づくり会社から、沖縄の行政機関へ。
【新市場/既存商材】新市場…立場を変えて地域振興を行うことに。

既存の「Can(やれること)」領域の得意を活かし、「New(新しいこと)」領域で価値を出す。これまでのキャリアは、それの積み重ねと言えます。