成績向上の3ステップ——理解・定着・活用

学習の過程には「理解(分かる)」「定着(できる)」「活用(使える)」の3ステップがあり、これができると「学習内容を習得した」状態です。

たとえば分数の計算では、「理解(分かる)」は「分数の計算手順を説明できる」、「定着(できる)」は「分数の計算を素早く行える」、「活用(使える)」は「初見の問題で分数を使おうと思いつく」状態です。

各ステップには、それぞれポイントがあります。

まず「理解(分かる)」は、ある事柄を理解できるように自分が分かる事柄に置き変えて説明する「たとえ話」が重要です。「定着(できる)」には繰り返し行う「反復」が、「活用(使える)」では簡単に答えが出せないものを考える「試行錯誤」の繰り返しが必要です。

では、それぞれの学習過程においても、機械と人間の得意な分野を検討していきます。

「理解(分かる)」のは人間が得意

「理解(分かる)」の分野で機械が活用されている事例を考えていきます。学習者の理解度を確認するためには「苦手分析」、前提知識の補充には「動画レコメンド」、説明には「映像(アニメ)授業」が活用事例に該当します。

この時、「動画レコメンド」や「映像(アニメ)授業」は、機械が得意とするAI的分野と捉えられるかもしれませんが、実際は機械よりも人間の方が優れている分野です。

もちろん、優れた苦手分析や、動画レコメンドもあるのですが、そもそも学習の一本化はとても難しいことなのです。数学の問題を間違えたのに、国語の学習に戻る必要があるなど、同一科目内だけに定義ができないことも多く、理解の順番にも個人最適が存在します。

既習範囲で、生徒が問題を間違える確率をAIが当てる精度は80~90%程度ですが、これから習う範囲の問題を間違える確率の場合、その精度は10~30%程度に留まるという研究結果があり、確認テストや映像授業で定義できる情報だけでは判断できないことが分かります。

たとえば、生徒が「追いつき算」のような、2次方程式を利用する問題でつまづいた時、基礎となる1次方程式の戻り学習を行っても問題が解けない場合には、出題文章を理解できず国語力に問題がある可能性があります。

このような場合には機械ではなく、人間が「たとえ話」を用いて学習をサポートする方が優れています。

また、学習指導要領の順番を変えることが良い成績を導くのではないかという視点で学習パスの見直しをする研究では、一部の高校数学を除き、定められた順番に学習することが有効であるという結果がでました。

他にも、学習するものと学習しないものを指導要領から選ぶことで、良い成績が取れるようになったという結果もでています。

成績向上において動画レコメンドを活用して学習する順番をカスタマイズすることよりも、人間による学習するべき内容の取捨選択が重要であることがうかがえます。

さらに何かを理解する際に感じる「分かりやすさ」や「面白さ」への共感体験には個人差があるため、これに対応することも人間の方が得意な分野であると言えます。

しかし、機械を利用することが無益なわけではありません。コスト削減の効果が期待できるので、「理解」の分野でも、機械による苦手分析や動画レコメンドの導入を検討する価値は高いはずです。

また、正確な答えを瞬時に回答できる力はChatGPTをはじめ機械が得意な領域であるとも言えます。