学校や塾など、教育機関を中心に記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」を提供するモノグサ株式会社(以下、モノグサ)。
教育現場において、児童・生徒の成績向上をより効果的にサポートするためにAIをどのように活用するべきかをテーマに、モノグサCEOの竹内孝太朗さんにご寄稿いただきました。
2019年に開始された文部科学省の『GIGAスクール構想』により、教育現場で日常的にICTツールが活用されています。文部科学省の調査によると、2021年7月時点で全国の公立の小学校等の96.1%、中学校等の96.5%が、「全学年」または「一部の学年」で端末の利活用を開始しているそうです。
モノグサは教育現場で児童・生徒の成績向上に寄与するツールとして、記憶定着のための学習プラットフォーム「Monoxer」を提供しています。
学校でのICTツールの利活用が進む一方、「AI技術をどのように教育に組み込むことが有用か」というテーマは、試行錯誤が行われている状態です。
今回は、人間と機械の得手・不得手を踏まえて、AIをどのように活用すれば生徒の成績向上を効果的にサポートできるのか考えていきます。
思考において人間が得意なこと、機械が得意なこと
学力の大事な要素のひとつ、「思考力」から人とAIの得意・不得意をひも解いてみましょう。
思考のプロセスには、まず前提となる「記憶」、それから「記憶」に基づき判別する「認識」、「記憶」、そして「認識」に基づいてどうするか決める「推論」という3つの段階があります。
今回は「熊らしきもの」と遭遇した場合を例に、「記憶」、「認識」、「推論」のステップでそれぞれを比較します。
目の前に「熊らしきもの」が現れた場合、私たち人間は、まず熊の姿かたちや、熊は雑食であるなど知識の「記憶」によって目の前の「熊らしきもの」の存在が、「熊」であることを「認識」します。そして「雑食の熊は危険だから逃げよう」という「推論」を行います。
一方機械は、「記憶」の分野で熊の見た目や、雑食であることを1度覚えると、人間のように忘れません。記憶することは、人間よりも得意です。
一方「認識」の領域では、今後ディープラーニングにより認識精度を人間よりも高めることが期待されますが、現状では範囲を決める能力が人間よりも極端に弱いです。
そのため、「熊らしきもの」の一部を見て、「何の動物であるか」という問いかけに、茶色い部分など「熊」を示す情報に着目できずに、どの情報を確認したら良いか、範囲が指定されないため認識できません。
突然「熊」に遭遇するような予想だにしていない状況で、最善となる行動を判断する力が求められた場合に、機械は既に決められたこと以外の判断が行えないため、「推論」は人間の方が得意な分野と言えるでしょう。
これらを前提にして、成績向上に向けた学習過程のステップはどのように分解できるか見ていきます。