目次
■ドラえもんに感動して始まった、漫画家デビューまでの軌跡
■人間ドラマに重点を置いた漫画作品の描き方

「裏社会」や「日本社会の闇」を描く、リアリティ溢れるストーリーが魅力の漫画『闇金ウシジマくん』。その作者である真鍋昌平さんは、独自の視点と情熱を織り込んだ作品で多くの人々の心を揺さぶっている。

(※その他のインタビュー写真は【関連画像】を参照)

今回は真鍋さんが漫画作りで重視すること、創作活動を支える隠れ家の存在、そして未来への展望について語ってもらった。

【プロフィール】漫画家 真鍋昌平
日本の漫画家。神奈川県茅ヶ崎市出身。代表作の『闇金ウシジマくん』は単行本の累計発行部数2,100万部を誇り、老若男女に愛されている。現在、ビッグコミックスピリッツで連載中の『九条の大罪』では、法と正義の在り方を様々な角度から問いかける人間ドラマに絶賛の声があがる。漫画家としてデビューして以来、苦境に立たされる人間のリアルを描き続けている。

■ドラえもんに感動して始まった、漫画家デビューまでの軌跡

「『闇金ウシジマくん』作者が創り出す、50年代デザインの聖地」|漫画家・真鍋昌平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

私には三つ上の兄がいて、手塚治虫さんのような大御所漫画家の作品が家に揃ってました。自然な流れで漫画を読むようになり、初めてドラえもんも読んだときめちゃくちゃ感動して、「自分もこんな作品を作りたい!」と衝撃が走ったような気持ちになりました。

漫画を描くようになったのは小学校の頃から。最初は模写をして、その後はクラスメイトをキャラクターにして、ロボットと戦うようなストーリーの漫画を描きました。それがクラスメイトたちに好評で、「漫画家になれるかもしれない」という自信が持てたんです。他に特別な才能があったわけではないので、やるしかないと。

将来の目標として『少年ジャンプ』で漫画家デビューしたいと思っていましたが、ハードルが高すぎて上手くいかなかったんです。当時は漫画家をやることがあまりカッコいいとは言われていなかった時代だったので、自信を失っていました。それから、試行錯誤を重ねてパルコから出ているフリーペーパーの『GOMES』という雑誌で賞を獲りました。そこが最初に表に出た瞬間です。同時期に『月刊アフターヌーン』という雑誌で1000ページの枠があり、「新人の漫画家が出やすい」と言われていたので、決め打ちして投稿した結果、「憂鬱滑り台」でデビュー。21歳ぐらいで担当編集者が付いて、現在に至るまで漫画を描いています。

■人間ドラマに重点を置いた漫画作品の描き方

「『闇金ウシジマくん』作者が創り出す、50年代デザインの聖地」|漫画家・真鍋昌平
(画像=『男の隠れ家デジタル』より引用)

最初は、描いた漫画が全然掲載されませんでした。それで理由を考えた時、大賞を獲らないと掲載される確率が少ないことに気づいたんです。そこで、年に4回行われる賞の審査員や受け入れられる作品をリサーチし、自分にできることを考えて戦略を立てました。

そこから連載を持てるようになったのですが、2本とも打ち切られるという挫折を味わうことに……。なぜ失敗したかを考えた結果、「売れなければいけないこと」と「人気がないといけないこと」の2つが原因だとわかり、『闇金ウシジマくん』では初登場1位を獲得することを目標に決めました。

得意なことがあったため、それに最大限に気を配りながら、自分が描きたいものと人が読みたいものに共通する要素を探しました。そこで“お金”をテーマに設定し、人間ドラマに重点を置いたんです。これまでお金を扱った漫画は多くありましたが、人間ドラマが描かれていないものが多かった。『闇金ウシジマくん』は、こうした背景から生まれています。

「『闇金ウシジマくん』作者が創り出す、50年代デザインの聖地」|漫画家・真鍋昌平
(画像=事務所にウシジマくんのフィギュアが飾られている、『男の隠れ家デジタル』より引用)
「『闇金ウシジマくん』作者が創り出す、50年代デザインの聖地」|漫画家・真鍋昌平
(画像=スタンガンなど、資料用に購入したアイテムも、『男の隠れ家デジタル』より引用)

ウシジマくんの連載が始まった当初は「生々しくリアルな描写を見たくない」という反応が多かった。けど、批判的な反応も含めて「何も反応がないよりはマシだ」と気にならなかったんです。それから映像化されたことで認知度も一気に上がり、普段漫画を読まない人たちにも作品が届くようになりました。

自分がよく言うのは、ドン・キホーテに来店するお客さんが自分のお客さんだと思ってるんです。ドン・キホーテって、すごいですよね。商品展開や見せ方はもちろん、来店するお客さんのことをとても考えて作っているところが面白くて、たくさんの学びがあります。

『闇金ウシジマくん』の1巻では、取材をほとんど行ってません。しかし、2巻目ぐらいからはライターの先生がいて、その先生に関わる人たちの話を聞いたことで全く知らない世界に触れることができ、視野が広がりました。自分が描くべきものや、今後描きたいものについて考えたとき、“その人に会いにいくこと”がリアリティな作品づくりにつながっています。

現在描いている『九条の大罪』は法律に関わる内容なので、弁護士や法務関係者、そして検察関係者の取材もしています。そうやっていろんな方にお話を伺い、情報を収集しています。

好きなことを仕事にしていますが、漫画を描いていて苦しいときもあります。連載中の『九条の大罪』で自殺について描いた部分は、自分自身も本当に自殺しそうなくらいの状態まで苦しみました。暗い部屋にいることができなくて、ずっとテレビをつけっぱなしにしていないと耐えられない状態。描き終わっても、その時の感覚がずっと続き、本当に恐ろしかったです。