ロシア・ウクライナ戦争の「停戦」を、なぜかG7広島サミットに集まる首脳たちに訴える、とする高齢者グループが記者会見を開いた。単に政府関係者や気に入らない言論人に対してマウントをとりたい、という気持ちだけが伝わる文書だ。内容に見るものはない。
世界の戦争はアメリカが悪い国だから起こっている、という高齢者層に特徴的な固定的な世界観。もし自分たちに従わないならロシアの殲滅を誓って戦争を賛美することに等しくなるぞという強引な脅かし。それ以外には、ウクライナはもちろん、ロシアに関する見るべき洞察や分析などは、一切何もない。ただ、「停戦」という語を呪文のように唱えることが呼びかけられているだけだ。
「停戦」と唱えよう。そうすれば、あなたも偉い人になり、他者にマウントがとれるようになる。さあ、一緒に唱えてマウントしよう、というだけの声明である。
なぜこうも日本の高齢者層には、「俺への尊敬心が足りない、俺の説教を聞け」、というタイプの方が多いのか、日本社会の現状の闇について思いを寄せざるを得ない。だがいずれにせよ、声明の内容については、取り上げるべき点がない。すでに各方面から否定的な反応も続出している。
それでも一つ論評しておきたいのは、この高齢者グループの声明が、ステレオタイプの思い込みに基づいて「広島」という言葉を利用しようとしていることだ。
広島は「非戦」の町なので、それを考えれば、あたかもウクライナに降伏を勧めてロシアの蛮行も黙って受け入れるようにウクライナ人に説教をしなければならない、と言わんばかりである。
確かに広島は「平和記念都市」である。だが広島が、原爆で「降伏」してから、ウクライナ人に「非戦」を説教したい人が集まる町になった、というのは、かなりイデオロギー的に歪曲された歴史観であると言わざるを得ない。