多くの子どもにとって、注射は怖いもの。病院での血液検査や予防接種は、育児を行うママパパの苦労の種のひとつでしょうが、もしかするとそれは日ごろの声掛けが原因かもしれません。
例えば、しつけのために「いい子にしないと注射してもらうよ」なんて、冗談半分でも言ってしまっていたなら……。新潟大学医学部小児科が運用するツイッターアカウントでは、親から子への声掛けに関する注意喚起を行っています。
小児科からお願いがあります
「いい子にしないと注射してもらうよ」
とお子さんに言わないでください
血液検査や予防接種をするときに余計に怖くなってしまいます
注射は罰ではないので、
「いい子にしないと注射してもらうよ」
と言わないでください
これを読んで、もしかするとドキッとしてしまったママパパもいるかもしれませんね。だってこうした言葉は、言うことを聞いてくれない子どもに対して、口からついポロっと出てしまうものですから。
しかしながら、こうした言葉こそ、実はお子さんの病院嫌いを加速させている、と認識しなければなりません。たしかに、親の言葉は子どもの考え方や物の捉え方に多大なる影響を与えますから、それが本当に何気ない一言であっても、注意を払う必要があるのです。
■ 医療体験に対し、心の準備のサポートを行う「プリパレーション」
では、病院や注射を怖がらせないようにするためにはどうすれば良いでしょうか?こうした医療体験に対し、心の準備のサポートを行うことを「プリパレーション」と呼び、適切な声掛けによって子どもの抱く恐怖心を和らげてあげる効果があります。
具体的には「処置や検査、手術のことを事前に子どもが受け止めやすい言葉や方法で内容を伝え、子どもの役割や過ごし方を一緒に考えること」を指し、親や医療従事者など様々な立場から行うことができます。
病院によっては、チャイルド・ライフ・スペシャリスト(CLS)と呼ばれる、子どもや家族が経験する医療の中の困難を乗り越えるサポートを行う専門家がいます。CLSは日本には50人弱しかおらず、非常に貴重な存在で、今回の投稿の引用元に添付されたプリパレーションについての画像も、CLSが制作を行ったものであるとのこと。
二児の父である筆者も、恥ずかしながらプリパレーションという言葉は初めて耳にしました。新潟大学医学部小児科でも、診察中に子どもがおとなしくできなかったり、ごねたりするときに親が不適切な声掛けを行っているシーンが時折見受けられるのだとか。言われてハッとしますが、たしかに子どもにとって余計な恐怖を与えるだけ。とてもしつけと呼べるものではありません。
■ 自宅で行えるプリパレーション 有効なのは「お医者さんごっこ」
とはいえ、やはり腕に針を刺す、という行為は幼い子どもにとってはどうしても恐怖を感じてしまうものでしょう。親が子に対して行えるプリパレーションについて伺うと、「子どもの”怖い”に合わせた対応が必要」との回答が。
特に小さな子どもは「知らないから怖い」と感じていることが多いそうなので、予防接種をあらかじめ伝えることはもちろんのこと、「お医者さんごっこ」で、消毒、注射、シールを貼るという流れを把握させておくことも有効な手段であるとのこと。
もちろん子ども一人ひとりの性格は異なるので、「これさえすれば大丈夫」という万能な方法があるわけではありませんが、”怖い”の種類に合わせて、事前に子どもと話をして、練習できるとより効果的でしょう。これは常に身近にいる親の方が、より親身になり分かってあげられることが多いかもしれませんね。
幼少時の恐怖体験と言うものは、すべからく後々も尾を引いてしまうもの。子どものためにも、果ては子どもの子どものためにも、日常的な言葉遣いを見直して、少しでも病院に対する恐怖心を和らげてあげることは、親にしか成し得ない役割と言えそうです。
<記事化協力>
新潟大学医学部小児科学教室さん(@Niigata_u_ped)
(山口弘剛)
提供元・おたくま経済新聞
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