変化し続ける社会環境に対応するために自らを成長させ、より良く変化する必要を日々、感じている方は多いのではないでしょうか。
そんな中で、どのようなことを実践すると目標にたどり着けるのかをプロに相談し、指導・アドバイスを求める「コーチング」に注目が集まっていますが、実際にはどんなものなのでしょうか……?
コーチングのプロによるセッションを受けることができる法人向けオンラインカウンセリングサービス「Smart相談室」を提供する、株式会社Smart相談室 代表取締役の藤田康男氏に「コーチング」について解説していただきました。
コーチングのポイント
株式会社Smart相談室 代表取締役の藤田康男です。
何かの記事を書く時に、冒頭部分はその概要や社会的背景などの説明、事実確認を行います。今回のテーマの場合、「コーチングとは何か?」「コーチングの概要とは?」などの章を始めに持ってくることが一般的かもしれません。
最近はコーチングの概要に関することや、ティーチングなど他のアプローチとの違いなどについて情報が多く発信されていますから、一般論については他の記事に譲ることにして、ここでは、私が思うコーチングを理解するための3つポイントからお伝えします。
ポイント1:コーチングは多種多様である
コーチングは手法なので、誰でもできるし、誰がやっても良く、適応場面も多いものです。定義は人によってバラバラ。目を細めてぼんやり包括的に見れば、それぞれの定義が大まかに一致するといった感じです。
個人的な意見ですが、私は「コーチング」という言葉が現代の日本社会にマッチしていないから、さまざまな定義が存在してしまっていると感じています。例えば「ブラック企業」や「ガクチカ」、「斜め上を行く」などのように、実態を反映した新しい言葉の誕生を切望しています。
ポイント2:想像されるスタイルは3つ
クライアントにコーチが支援を行うことを前提として、「コーチング」という言葉から想像されるスタイルを3つ紹介します。
①専門家スタイル
クライアントがお金を払って専門家から教えてもらう、またはコーチングをしてもらうスタイルで、決定権や選択権が専門家にあるスタイルです。広義では、教師やスポーツのコーチなどが当てはまります。
②医療スタイル
このスタイルでは、医師(コーチ)はいろいろと患者(クライアント)に物申しますが、最終的な決定権や行動の選択権はクライアントにあります。しかしながら、疾患・治療・手術・予後などに関する情報の非対称が大きく、大きいがゆえに①を彷彿とさせます。情報の非対称性が低ければ、そもそも、今回のコーチングの議論には載りません。
③プロセス共有スタイル
専門家とクライアントがプロセスを共有しながら、課題に取り組むスタイルです。プロセスの共有とは、同じ時間の流れの中で、話をしたり、行動したり、さまざまなことをします。これから詳しくお話しするコーチングはこのスタイルに該当します。両者の関係性は、時間を共にする間に関してはフラットです。料金は、クライアントが支払い、その結果についてはすべてクライアントが責任を持ちます。
*上記の内容は、『コーチングのすべて――その成り立ち・流派・理論から実践の指針まで』(ジョセフ・ オコナー【著】、アンドレア・ラゲス【著】)に詳しく書かれていますので、ご参照ください。
ポイント3:多様であるから資格が作られた
1つ目と2つ目のポイントからわかるように、さまざまな要素があるために、コーチングという言葉を耳にした際に人がイメージするものの幅が広く、かつてはトラブルを招くことがあったようです。
その結果、一定の定義に基づいたコーチングの実施に向けた資格認定の動きがアメリカで生まれました。その1つに、トーマス・レナードが設立した、国際コーチ連盟(International Coaching Federation 以下、ICF)という機関があります。
このICFが認定する資格が、いわゆるコーチングの資格として広く認知されています。一方、その他にもさまざまな資格認定機関があり、必ずしもICFによる認定がすべてでないことはご承知ください。
ICFの資格を持っていることをアピールするコーチも多く、Smart相談室でもコーチを採用する際にICF認定の有無も確認しています。
ただ、ICFの資格取得には、ICFが認めた育成機関で学ぶことが必須であるものの、国内に認定機関は10法人ほどしかありません。
そして、それぞれの育成機関によって方針や、教材などのマテリアル、固有名詞などの使用する言葉、育成方法、さらには学習時間などが統一されておらず、各学校の個性がとても強く出ています。
これはあくまでも個人の意見ですが、同じICF認定の資格を持っているコーチであっても、この育成機関の個性が影響を大きく与えていて、コーチング手法やクライアントとの接し方に現れるようです。