たしかに、履歴と日付けはパソコンの中にデータとして残るが、文書の文面に出てくるわけではない。また電子的に改竄できないこともない。今回のように、印刷した文書の文面だけを出してくると、最終的で正式のものと思い込んでいるので、こういったデータをチェックすることを思いつかない。内部文書を漏洩させた職員がこういったことも想定してやったのだとすれば悪質極まりない。
もとより、小西議員の主張する「放送法の公正原則の解釈変更」は、あったとしても、現行放送法に違反しているとはいえない。総務省は放送免許を受けたものを指導、監督する義務があるからだ。
これについてはいろいろいう法学者たちがいるが、占領中に政府とは独立の行政機関である電波監理委員会が所掌していたものを、1952年のこの委員会と関連法の廃止によって吉田茂総理が郵政省(現在の総務省)に移管した歴史的経緯があるので、彼らの得意の「解釈」でどうにかなるものではない。
ということで、高市元総務大臣は不法行為をしていたわけではないのだから、公益通報制度が適用される不正行為の告発にはあたらない。そうではなく、公務員の守秘義務に違反した国家公務員法違反の犯罪だということになる。8年前のことなので、もう時効だという指摘があるが、問題は起訴できるかどうかなどではない。
総務省は電波を扱う重要官庁である。携帯電話の基地局やリレー網に関わる機密漏洩で中国やロシアのスパイが暗躍していたことが以前に報道されたことがある。戦争ともなれば、電波や通信設備についての情報は高度の軍事機密情報となる。
つまり、総務省のこの機密漏洩は、国家安全保障上の重大な問題だといえる。その重要性は「放送法の公正原則の解釈変更」どころではない。
今回の「総務省文書問題」は、「総務省機密漏洩事件」として真相を解明しなければならない。