ステルス性の高い「加工費」
コンビニ売上の3%を占めると言われるのが、レジ横のアメリカンドッグや唐揚げなど「ファストフード」だ。人気も高いがコストも高い。加工に手間がかかるからだ。
価格100円のファストフードの場合、粗利は50円。ここから、本部の取り分27円を差し引いた、「23円」が店舗利益だ。同額の通常食品の店舗利益「16円」に比べ、「儲かる」と本部は推奨する。
だが、実際はそうならない。解凍する。揚げる。器にのせる。工程が変わる都度手を洗う。厚生労働省が推奨する手洗いは1分間。時給換算すると約18円だ(※2-1)。これら加工の手間を考慮すると、ファストフードはほとんど赤字になるという(※2-2)。
こういった加工費は、原価計算をしない限り数値に表れない。「忙しいのに儲からない」といった状態を招きやすいのだ。
廃棄費はさらに増える廃棄費で問題となるのは「コンビニ会計」である。商品を廃棄しても、費用として認めず、本部の利益をかさ上げする、独特の計算方式だ。2009年の公正取引委員会「排除措置命令」以降、一部で改善されたものの、いまだ廃棄した商品原価の多くが店舗負担となっている。
この廃棄費が、さらに増える可能性がある。2024年問題だ。時間外労働規制がトラックドライバーに適用されるため、配送員不足が懸念されている。ローソンは、これを見越して、1日3回の配送を2回に減らす。これは、需要予測が難しくなるということ、売れ残りが増えるということを意味する。1日の売上(日販)が50万円程度の店舗の場合、廃棄費は1万3千円程度(※3-1)。この負担がさらに大きくなる可能性がある。
まず教えるのは「日本語」から大分減ったようにみえる外国人労働者だが、コンビニではいまだ主力選手だ。
最初に、彼ら(彼女ら)に教えるのは「仕事」ではない。「日本語」だ。通常業務ができるようになるまで半年程度かかるという。
日本人なら、教育に手がかからない…というわけではない。コンビニのサービスが増えすぎたのだ。宅配便の受け渡し。公共料金収納代行。マルチ機能で複雑化するコピー機。最近では、バーコード決済まで。これらの対応を一から教えなければならない。相手は、高校生からシルバー世代までと幅広い。本部から送られてくるマニュアルは“焼け石に水”だ。「もう教えられない」と、オーナーは嘆く。
将来的にオーナーは減っていく教わる側も大変だ。サービスが多すぎて覚えきれない。若者は、コンビニでバイトするとき、駅前など客の多い店舗を避け、楽そうな店舗をSNSで探す、という。
セブン&アイは、アルバイト期間を経験としてカウントし、ロイヤリティを割り引く「インセンティブ・チャージ」(従業員独立支援制度)を導入している。アルバイトのオーナー化が目的だ。
だが、「賢い」彼ら(彼女ら)が、キツくて儲からないと知っている彼らが、将来コンビニのオーナーになりたいと思うだろうか。
現在のオーナーたちの高齢化も進んでいる。
「自分も長くはやれない」 「15年後にはおそらく引退してる」 「今後10年後、15年後コンビニを経営する人がいなくなる」
コンビニの存続自体を危ぶむ声が、オーナーたちから出始めている。