<事例2>再エネ拡大と原発停止
<事例2>朝日新聞 2023/02/06
■社説:エネルギー激動の時代 持続可能な社会へ変革急げ
世界のエネルギー環境が半世紀ぶりの激動期を迎えている。ロシアのウクライナ侵略で天然ガスなど化石燃料の価格高騰と供給不安が広がり、70年代のオイルショック以来の「エネルギー危機」とも称される。
一方で、地球温暖化による「気候危機」への対応も待ったなしの課題だ。この二つの危機を同時に乗り越え、持続的な社会システムへと向かえるのか。それが問われる局面だ。
主要国は、次々と動き出している。化石燃料からの脱却が遅れてきた日本も、歩みを速めなければならない。
(中略)
二つの危機は、社会の構造を変え、持続的な経済成長につなぐ好機にもなりうる。それを現実のものにしようと、新たな競争の時代が始まっている。
日本はどう臨むのか。まず基本にすべきは、新技術の普及をはじめ内外で変化する情勢に機敏に応じ、有用な成果を積極的に取り込む姿勢だろう。
この点で日本には反省がある。2000年代に再エネの革新が世界で広がる中で、国内の本格的な取り組みは11年の福島第一原発事故の後まで遅れた。政府も産業界も、慣れ親しんだ化石燃料や原子力に重きを置くあまり、抜本的な変革に背を向けてきたのではないか。その轍を踏むことは許されない。
昨年末、政府は「GX(脱炭素化)実現に向けた基本方針」と今後10年間の工程表をまとめた。官民で150兆円を投資する想定だ。脱炭素化に本腰を入れること自体は当然だが、手放しでは評価できない。
新方針は、再エネと原発の「最大限活用」をうたう。ただ原発は難題が多く、主役にはなれない。他方、再エネと省エネは、今の技術でも拡大の余地が大きい。これらを主軸に据え、普及に向けた課題の克服に力を注がなければならない。
朝日新聞は、再エネをポジティヴなエネルギー、化石燃料と原子力をネガティヴなエネルギーと認定した上で、再エネの拡大を強く主張しています。しかしながら、現在の電力不足と電気料金の高騰とは、日本のマスメディアが無責任に推奨してきた計画性のない浅はかな再エネ至上主義にあります。
高価な長期蓄電システムが十分な存在しない中、供給不安定な再エネによる発電をバックアップしているのは化石燃料による火力発電ですが、致命的な問題として、このバックアップ電源の容量が再エネ拡大に追いついていないのです。そればかりか、電力自由化の価格メカニズムによって、再エネはバックアップ電源である石油火力発電をいくつも廃止に追い込んでいます。その結果として生じた電力の供給力不足によって卸売電力取引所の流通量が減り、電力価格が高騰しているのです。
さらには、安価でクリーンな電源である原発の停止により、化石燃料がベースロード電源としても利用され、CO2の排出を増大させています。つまり、再エネ拡大と原発停止は、電力不足と電気料金の高騰を抑止できないばかりか、地球環境にも負荷を与えています。
日本のマスメディアは、「再エネ拡大・脱源発」という浅はかな美辞麗句で国民を洗脳し、その生活を困窮させているのです。これはまさにポリアンナの原理の悪用に他なりません。
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