専門性を追求した「肉そば」「鉄板玉子チャーハン」
実際の雰囲気を知るために、「丸源ラーメン 小平店」(東京都小平市)に足を運んだ。駐車場も備えた大型店に入り、「肉そば」も食べてみた。トッピングは薄い豚肉が多く入り、玉ねぎ、海苔、ねぎ、柚子こしょうおろしなど。スープは見た目ほどしつこくない。
「肉そば人気が定着し、2009年頃からは、店の売り上げをけん引する存在となりました。今でも大人気ですが、その商品だけに依存しない工夫もしてきました」(同)
池田さんは「ファミリーやグループでもご来店される大型店は『大衆性と専門性のバランスが大切』」とも話す。
丸源ラーメンにおける「肉そば」は専門性だが、大衆性として「醤油ラーメン」「とんこつラーメン」「塩ラーメン」「味噌ラーメン」などもある。これ以外に「丸源餃子」「鉄板玉子チャーハン」などサイドメニューも多い。肉そば推しの人も、違うメニューが食べたい時もあるだろう。
肉そばと並ぶ専門性である「鉄板玉子チャーハン」も注文してみた。鉄板の中央に円形のチャーハンが乗っており、運ばれた後、店舗スタッフが溶き卵をチャーハンの周囲にかけてくれるパフォーマンスつき。お客を楽しませる工夫として興味深く見ていた。
お客の目の前でひと手間かけるのは、たとえばソムリエがワインをグラスに注いだり、バリスタがラテアートをつくったりするのに近い、おもてなし訴求といえよう。

じわじわと地域に浸透、繁盛店になるまで10年かかった例も
さて、冒頭で紹介したように、ラーメンは地域によって好みの味が変わる。かつて専門家を取材した際は、「大きく分けて、東日本は煮干しのしょうゆベース。西日本はとんこつベースで、特に九州は圧倒的にそうだ」という話を聞いた。
なぜ、丸源ラーメンは北海道にも九州にも出店できるのか。
「以前は丸源ラーメンが受け入れられるまでは苦労しました。北海道でも札幌は味噌ラーメン、函館は塩ラーメンの文化です。ご存じのように九州はとんこつラーメンで、博多と久留米(ともに福岡県)ではとんこつのつくり方も違います。
また、宮城や福島をはじめとする東北地方は『幸楽苑』(本社:福島県郡山市)の存在感が強い。そして香川県は、高松や丸亀に代表されるうどん県――という地域文化もあります」(同)
各都道府県の出身者は、ご当地のラーメンやうどんを食べて育った人も多いだろう。
「一方、当社には『地域一番店主義』という戦略があります。必ずしも短期視点のみで結果を追い求めない。繁盛店になるまで約10年かかった例もあります」
過去にはセットメニューを充実させるなど、地域浸透への取り組みを進めていった。
「展開するうちにわかったのは、地域の人気店は中型店や小型店で、メニュー構成も絞った個人経営が多い。当社のように大型店で多彩なメニューを揃えた店は少ないのです」(同)
現代のように情報拡散が速いと、昔のような地域の違いは薄れていく。そして友人や知人とも気軽に立ち寄れる大型店は、特にクルマ社会の地方では使い勝手がよい。もちろん店に魅力がなければ支持されないが、こうした複合要因も追い風となったのではないか。

