科学的に記憶するための学習理論①「テスト効果」

1つ目の「テスト効果」とは、テストなどにより対象を想起することによって記憶が定着するという効果です。

2011年にJeffrey D. Karpicke and Janell R. Bluntによって「Retrieval Practice Produces More Learning than Elaborative Studying with Concept Mapping」というタイトルで発表され、Science誌に掲載された論文が代表的です。

この論文では科学の文章を学習の対象として、

①「一定の期間で読むだけ」
②「繰り返し読む」
③「読む+概念図を作る学習」
④「読む+テストによる学習」

のそれぞれの方法で学習したときの1週間後のテストのスコアを比較しています。

一般的に効果が高そうと考えられがちな③「読む+概念図を作る学習」ですが、正答率は40〜50%にとどまりました。

一方、④「読む+テストによる学習」の正答率は、60〜70%と③「読む+概念図を作る学習」のおよそ1.5倍もスコアが高い結果となりました。

また、学習者がそれぞれの学習方法でどのくらい効果を実感したのか自己評価を比較してみると、④「読む+テストによる学習」は自己評価を低く付けた人が多く、他の学習方法をしたグループの方が「記憶できている」と高い自己評価を付けた人が多い結果でした。

しかし、実際のスコアは④「読む+テストによる学習」の方が他の学習グループの1.5~2.5倍高い結果となりました。

テストは記憶したものを確認するために広く行われていますが、実は記憶の定着にも効果的であることがこの実験により科学的に証明されたと言えます。

科学的に記憶するための学習理論②「産出効果」

2つ目の「産出効果」は、たとえば単語を記憶する際には、単純に単語を見て読み上げるよりも能動的にアウトプットするのが効果的であるという理論です。

1978年にNorman J. Slamecka and Peter Grafが、 「The Generation Effect: Delineation of a Phenomenon」というタイトルの論文で提唱したものです。

論文中の実験では、英単語のペアのリストが与えられ、それぞれのペアの1つ目の単語に対して2つ目の単語が何なのか記憶するタスクを行い、 「ヒントに基づいて記憶したいものを想起して学習した場合」と「記憶したいものを見て読み上げて学習した場合」の学習結果を比較しています。

「ヒントに基づいて記憶したいものを想起して学習した場合」は平均すると80%を超える正答率となっているのに対し、「記憶したいものを見て読み上げて学習した場合」は70%弱の正答率となっています。

ヒントの内容には大きな差がないことからも、よりヒントの少ない不完全な状態で答えを導き出せる方が、より記憶の定着には有効であることが示されています。