受け入れる企業には、社会貢献以外の利点も

——企業は業務見直しから準備をするんですね。

横溝:はい。「ショートタイムワーク」を導入する企業にとっては、社会貢献的な取り組みというだけではなく、業務の見直しをすることによる業務の最適化にもつながります。

さらにショートタイムワーカーの得意やスキル、経験を生かすことで、業務担当者ひいては企業の生産性の向上にもつながりますし、労働時間を理由に休眠していた人材を登用することで人材不足の解消につなげることもできます。

——どのような業務が多いのでしょうか?

横溝:各企業によって、お願いしたい業務が当然異なりますのでこの限りではありませんが、アンケート結果を分析したデータの作成や、AIアノテーションのための教師データの作成など「集中力が必要で、大量のデータを扱うけれど短時間で区切れる業務」が一例として挙げられます。

それから、SNSの更新や情報リサーチなどのお仕事を担当される方もいらっしゃいます。

——ショートタイムワーカーを採用する際に、ITリテラシーにギャップが生じることはありますか?

横溝:たとえば“Excelができる方”のような曖昧な条件ではなく、具体的にExcelのデータ入力なのか、どんな関数を使うのかなどを明確にした求人内容にすることを勧めています。

実際に就労される方はスキルにマッチしたお仕事で採用されるため、大きなギャップは生じにくいです。また、業務をお願いする際には、属人化している業務から、マニュアルを読んで業務を進められる状態にするため、業務を切り出した際に、業務マニュアルを準備していただきます。

そのマニュアルと、実際に業務をしていく中で分からないことは、コミュニケーションを通じて確認できるように企業側に対応いただきます。弊社からは企業向けのガイドブックを用意し、具体的な事例を紹介したり、環境を整えるための提案をしています。

リモートワークで実現できた、越境マッチング

——就労希望者と企業、業務とのマッチングはどのように行いますか?

横溝:ソフトバンク社内での事例をご紹介します。

弊社では、CSR本部が各部署から業務依頼を受け、ショートタイムワークの理念や社内の運用方法を部署に説明します。その後、部署に依頼したい業務内容を求人票にまとめていただき、求人票をもとに人材を募集します。

募集方法は大きく2つあります。1つ目は、障がいのある方の支援機関からの紹介です。

弊社では、外部の連携先として、障がいがある方向けの100を超える支援機関(就労移行支援事業所など)にご協力いただいています。
就労移行支援事業所などでは、就労を目指して2年間の職業訓練を受けられますが、その中でも「長時間働くこと」を目指すことが難しい方も一定数いらっしゃり、ショートタイムワークで働きたいという方を弊社に紹介いただきます。
このように、支援機関からご紹介いただくことで、入社後も就労移行支援事業所などから継続的なサポートを受けながら仕事をすることができ、ショートタイムワーカー、部署担当者ともに安心して働きやすい環境につながっています。

それから、仕事と子育ての両立を目指す方々を対象として、弊社の求人情報を「マザーズハローワーク」でご案内いただき、採用に至っているケースもあります。

また、人材派遣会社と連携し、派遣社員として、短時間で働きたい方の紹介も受けられるようになりました。

——愛知県に住む方と高知県の企業をマッチングした例があるそうですが、詳しく教えていただけますか?

横溝:はい。2022年の9月から2名が雇用され、環境データなどからCO2の排出量を集計する作業をテレワークで行っている事例です。

愛知県日進市様とソフトバンクは「テレワークを活用した女性活躍推進ためのショートタイムワーク」事業を一緒に推進しております。
愛知県日進市内在住の人材と企業をマッチングさせる取り組みを進めるうちに、愛知県日進市内在住の人材と県外企業とのマッチングにも取組みを拡大することとなりました。
県外の企業としては、ショートタイムワークにご賛同いただいている企業のひとつで、高知県にある旭食品株式会社様に、弊社より3者での取り組みを提案し、実現しました。

テレワークを活用し部署とのコミュニケーションもしっかりとっていきます