イラク戦争は「誤った戦争」か

アメリカ国内でブッシュ大統領が戦争責任を償うべきだとする声はくすぶり続けている。MSNBCのミディ・ハッサンのように中東で壊滅的な被害を引き起こしたブッシュ大統領が戦争犯罪に問われるべきだという声も、アメリカ左派の間では根強くある。

アメリカ人は「誤った戦争」であったイラク戦争を反省し、教訓から学ばなければならなない。しかし、筆者はアメリカ人自身がブッシュ大統領に責任を押し付けるがあまり、戦争推進における世論の役割を軽視しているように思える。

過去の全ての戦争がそうであったように、アメリカ人は「誤った戦争」をするために戦争は始めるわけではない。第一次世界大戦や第二次世界大戦がそうであったようにアメリカ人は自分たちが「正しい戦争」を戦っていると信じて戦うのである。

そして、20年前のアメリカ人の多くはイラク戦争がまさしく「正しい戦争」であると信じていた。

既定路線だったフセイン政権打倒

イラク戦争は開戦前後の時期において極めて多くの、超党派の支持を集めた戦争だった。ブッシュ政権にイラク侵攻のお墨付きを与えた決議は下院では429人中296人、上院では100人中77人が賛成し、クリントンやバイデンなどの民主党有力議員の多くがそれを支持した。開戦前は64%のアメリカ人が対イラクの武力行使を支持し、開戦直後その数字は72%に上昇した。

アメリカによるフセイン政権打倒が2003年以前から既定路線だったことも忘れられがちな事実だ。1991年の段階からジョージ・H・W・ブッシュ大統領は反フセイン派の蜂起を呼びかけており、1998年にはイラクの「レジームチェンジ」がアメリカの外交目標であると規定したイラク解放法がクリントン大統領によって署名された。

アメリカ人の誰もが、化学兵器を実戦使用し、自国民や少数民族の弾圧、クウェートを侵攻し湾岸戦争を引き起こしたサダム・フセインがいなくなることを望んでいた。そして、それを目指す政府を支持した。