暫定規制対策のT4Aと、「トヨタから供給」のダイハツ製AB

「7つのSって何だ?」スズキが挑んだ《新規格軽自動車》4代目フロンテ7-S【推し車】
(画像=フルサイズ550ccエンジンを積んだフロンテ7-S後期型は、2スト3気筒のT5Aのほか、スズキ独自のF5Aが間に合わなかった初期には、名目上はトヨタエンジンという事にしたダイハツ製4スト2気筒のAB10を暫定搭載する、珍しい例となった、『MOBY』より 引用)

肝心のエンジンですが、軽乗用車用2ストエンジンはもともと小排気量で、ブン回して高出力を得るため排ガス中の有害物質や燃費性能は厳しく、仕方なく昭和51年排出ガス規制の段階で若干緩めた「昭和50年暫定規制」が1977年9月生産車まで適用されました。

大急ぎで開発された新規格版フロンテ7-S初期型は、暫定規制対応のため、従来の4代目フロント用水冷2スト356cc直3の「LC10W」をボアアップして443cc化、スズキTC排ガス浄化システムを組み込んだ「T4A」を急造します。

これで1976年4月~1977年9月の暫定期間を乗り切る間に、水冷2気筒のL50をベースに3気筒化、スズキTCの発展型TC-53を組み込んだ、昭和53年排出ガス規制対策2ストエンジンの本命、LJ50の横置きRR車用「T5A」を開発しました。

しかしこのT5A自体も「つなぎ」で、排ガス規制の激しい乗用車用としてはパワーが物足りず、将来性を考えれば4スト化は避けられません。

ただ、それまでスズキが開発した4ストエンジンは海外向けジムニーと、国内向けにも少数販売されたジムニー800用の797cc直4SOHCエンジン「F8A」しかなく、3気筒化&ストロークダウンした「F5A」の開発に手間取りますが、暫定規制明けは目前です。

やむなく、同じ東海地方発祥の縁でトヨタを頼り、トヨタ傘下のダイハツ製547cc4スト直2SOHCエンジン「AB」をトヨタ経由で仕入れ(※)、1977年6月の550ccフルサイズ化へT5Aともども間に合わせました。

(※資料によっては「ダイハツから買った」と書かれていますが、実際にはトヨタ経由で仕入れており、カタログの諸元表には「トヨタAB10型」、スズキ歴史館の展示説明文にも「トヨタより供給」と書かれています)

1978年10月には開発完了したF5Aへ更新されたため、ダイハツ製トヨタエンジンAB10を搭載したフロンテ7-Sは、1年2ヶ月ほどの短期間販売されたのみです。

単に他社のエンジンというだけならともかく、ライバル社のエンジンを載せる決断はやむをえない「妥協」だったと思いますが、同時期では他にもマツダの軽トラ「ポーターキャブ」が、550cc化で三菱製2G23「バルカン」や同3G81「サイクロン」を積んだ例があります。

※この記事内で使用している画像の著作者情報は、公開日時点のものです。

文・MOBY編集部/提供元・MOBY

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