ドラグ:誘う釣り
フカセでは掛からないスレヤマメやバラした獲物を積極的に掛けるために、誘いの釣りで攻略していく。
この誘いの釣りは、自分自身で魚の位置を把握し、的確にヤマメの口元へ届ける”攻めの釣り”といえるだろう。また、この誘いの釣りをマスターすることで、ルアーのような誘い効果となり、スレヤマメがエサに引き寄せられ、釣果にも差が生まれる。

アタリは明確に現れる。目印が流れに対して、根掛かりのように突然止まり、また沈み込み、モゾモゾと小刻みに震えるようなアタり方をする。これは魚も居食いの状態で、仕掛けの違和感にも気づいていないからだ。アワセはひと呼吸おいた遅アワセで、コンパクトに、少しサオを立ててやるとヒットに結びつく。
ただし、流し終わりで、掛ける場合が多く、のされやすく、フカセと比べて、バレ率も高い。ヒットすれば、速やかに下流へ移動して、上ザオでサオを絞り、テンションコントロールを維持しながらやり取りしたい。
誘いの要領としては、仕掛けを上流側に倒し、水流に対してブレーキを掛けながら流していく。
ブレーキを掛け過ぎると、仕掛けやエサが回転し、不自然な動きになる。底波を流すことをキープしながら、エサ、オモリの順にエサが底波を這うイメージで流したい。それにより、水中イトとオモリの水抵抗がなくなり、ヤマメも無警戒でエサに食いつく。また、流し切りで、仕掛けを浮き上がらせて、エサをアピールさせて食わせる。
やり取り
特に9寸(約27cm)クラス以上の良型ヤマメは一度ヒットすると、流れを味方につけて、力尽きるまで、強い引き込みが楽しめる。サケ科だけあって、体をねじりながらローリングし、ハリ外しの行動を取る。さらに石のすき間に逃げ込む行動を取り、やり取りの難易度を一気に上げる。これら引き込みをかわして、手中に収めた時の満足度は非常に高い。
具体的に尺ヤマメの対処法を伝えていきたい。ヤマメの特性を理解しておけば大物を手中に収める確率も高まる。
突進速度
一度ヒットすると突進速度で仕掛けの高切れやハリのチモトからラインブレイクしやすい。流す前に、結び直しや水中イトにザラツキがないか点検しておく。ヤマメの突進を抑えるために渓流ザオ全体の弾力を活かし、タメながら強い引きを受けとめなければならない。

そこで私は胴に乗る調子のサオを使用し、掛かれば上流側に倒し、根元から曲げる気持ちでタメる。これにより、魚の頭を上流に向かせて落ち着かせ、泳がせやすくさせる。また、水中イトを上流側に倒し、流れとイトが並行になるほど魚に掛かる水抵抗はなくなり魚も大人しくなる。
反対に水中イトを真上から下流側へ倒すと水抵抗で魚も暴れてしまう。よって、尺クラスの大物がヒットしたら、速やかにサオを上流側(30~45度)に倒すこと。それでも尺を超える大物だと疾走することもある。そんな時は頼るリールもない分、全身をショックアブソーバーとして突進速度に対応したい。
ローリングと首振り
ヤマメはハリに掛かり、違和感を覚えると本能的に体をねじり、回転させて流れに乗りながらハリ外しの行動を取る。そしてイトを緩めると体にイトを絡めていく。イト絡みが発生すると仕掛けの長さが短く、バランスも悪くなり、ハリ外れやラインブレイクのリスクが高まる。対策は、しっかりイトを上流側に張り、魚の頭を上流に向けて泳がせることでローリング防止になり、仮に絡んでも自然にイトをほどいてくれる。
首振りはヤマメ特有であり、抵抗を感じると全力で首を左右に振り、ハリ外しの行動を取る。これもコツをつかめば簡単に対処できる。首振りを始めたらサオのテンションが強い証拠なので、サオの曲がりを緩めてあげる。すると首振りを止めておとなしく泳ぎ始める。要は、ヤマメを仕留めるためのテンションコントロールが大切で、サオの曲げの強弱をつける。ヤマメが止まればテンション強、暴れればテンション弱で微調整し、ヤマメと対話するつもりで徐々に体力を奪っていく。
障害物
ヤマメは石裏などの障害物に逃げ込む習性がある。大石や浮石の多い河川では取り込みの難易度が一気に高まる。ヤマメ釣り経験者は大物を石裏に逃げ込まれバラシた苦い経験をしたこともあるだろう。これもテンションコントロールが何よりも大切。ローリングと首振りの対策に慎重になりすぎるとすきを見透かされ、すき間に逃げ込まれ、ラインブレイクになりやすい。
ヒットしたら中層でのやり取りを心掛け、決して主導権を渡さないようにしなければならない。大石や浮石の多い河川では日ごろ使用する水中イトの号数よりもワンランク太い号数で対応し、サオを寝かせ過ぎないよう立て気味でやり取りしたい。