外食産業は、コロナ禍で最も大きな打撃を受けた産業の一つです。今後コロナの影響は縮小していったとしても、深刻な人手不足に加えて、食材原価やエネルギーコストの高騰により、もはやコロナに関係なく収益構造自体を大きく変えることが求められています。

鳥貴族やダイナックなど大手チェーンからホテルレストランまで、国内約15,000店舗の飲食店にクラウド型予約管理システム「ebica」を展開する株式会社エビソル代表取締役田中宏彰氏に、今後の外食産業が取るべきWebマーケティングの取り組みについてご寄稿いただきました。

忘年会シーズンの予約数は2019年超えも、大規模宴会は消失

2022年の年末シーズンは全国の飲食店の予約数がコロナ前の水準に戻り、主に大都市圏で、久しぶりの忘年会シーズンらしい賑わいが感じられました。

その一方で、コロナ前と比較すると大規模な企業宴会が大幅に減少し、1組あたりの人数が減りました。飲食店が売上を確保するためにはより多くの組数を入れるために回転重視の集客に舵を切る必要があります。

コロナの影響で外食利用が大きく変化したことに加え、食材、水道光熱費、人件費などコストが高騰している厳しい環境の中、ポストコロナで飲食店が収益を確保していくためには、ITテクノロジーを活用しながら、これまでの常識に捉われず新しい取り組みに挑戦することが求められます。

外食業界は小規模な事業者が多いため、他の業界に比べてWebマーケティングへの取り組みも遅れをとっていましたが、コロナ禍をきっかけに新たなネットサービスの導入が急速に進みました。

デリバリーやテイクアウトなどの中食を提供するネットサービスの普及は顕著でしたが、主戦場であるイートインに関してもネットを活用した新たなマーケティング施策による成功事例がたくさん出てきています。

この記事では最新のデータをみながら、2023年に飲食店が取り組むべきWebマーケティング施策についてご紹介します。

・週次予約数推移の2022年版(2019年との比較)

・グループサイズの変化

コロナによる「予約」習慣の定着

コロナ禍で飲食店ネット予約ニーズが拡大

コロナの影響で、消費者は飲食店に行く前に営業時間や感染対策、空席の有無などを確認し、店の前で待つことのないように予約をすることが当たり前になりました。

これまでウォークインが中心だったファミレスやカフェなどの幅広い業態で予約を受け付けるようになったことも一因ですが、来店当日、来店直前の予約が大幅に増加しています。

予約を受付ける店舗側ではスタッフが不在で電話に出られない状況が頻繁に発生したため、お客様に正確な営業状況を伝えるための連絡手段としてこれまで以上にネットを活用する飲食店が増えました。

2020年10月よりGoToEatキャンペーンが大々的に行われたことも契機となりネット予約が急速に普及し、飲食店予約の約50%がネット予約になりました。

また、GoogleやInstagram、LINEなどのプラットフォームがそれぞれ持つサービスの特徴を活かして、飲食店検索・予約サービスを本格的に強化しています。

これにより特に消費者の検索導線も変わりつつあります。例えば、スマホ検索スキルの高い20代は写真や地図で検索して行きたいお店に辿り着くことも多くなっています。

コロナ禍で消費者のニーズとネット予約導線の双方が変わったことによって、今後も飲食店の探し方が多様化しネット予約の普及が進むことが見込まれます。

ネット予約の更なる普及のカギは「電話よりも高い利便性」

過去に比べて上昇したとはいえ、他業界(例えばホテルのネット予約比率は約8割と言われています)と比較すると飲食店のネット予約の普及はまだまだ低い水準です。

ネット予約比率が高まることは、人手不足を補い、集客上の競争力にもつながるので飲食店にとっても大きなメリットがあります。今後、飲食店のネット予約を更に普及させるためには、「ついつい電話をしてしまう消費者の習慣」を変えることが不可欠です。

ホテルよりも即時性が求められる飲食店予約においては、来店直前まで予約を受付けたり、満席時に空いている時間帯や近隣店を即時にレコメンドしたりするなど、ネット予約ならではの機能を活かして、消費者に「電話よりも高い利便性」を提供することが有効と考えられます。

「電話よりも便利なネット予約」を提供するためには飲食店経営者の相当な覚悟が必要です。例えば、直前のネット予約を受け入れるには、ツールの導入に加えて、現場のオペレーションにも変更を加える必要があります。

「直前のネット予約が増えると店舗スタッフに負荷がかかるのでウチはまだいいか」と二の足を踏むお店も多いです。

しかし、これまでウォークインで来店していたお客様が直前予約に移行していることを考えると、回転数を上げて客数を増やしたいと考えているお店はこれまでのオペレーションを見直しポストコロナの消費者ニーズに適応する必要があります。