イスラム教の国であれば、年に一度当たり前に行われるラマダンという行事があります。
日本人の私たちも学校の授業で少し聞いたことがあるという人が多いのではないでしょうか。そう、ラマダンとは毎年一か月間断食をする期間のことです。
一か月間というと、死んでしまうのでは!と思う方がいらっしゃいますが、さすがに一か月間丸々断食するわけではなく日中の太陽が出ている間のみ断食を行うのです。つまり食事は夕食、もちろんその後自由に夜食も食べることができるということになります。
最近ではファスティング(断食の意味)という言葉をたまに耳にするくらい、日本人にとっても断食は以前より身近なものとなりました。
しかしながら、まだまだ認知度は低く、体験したことがある人はほんのわずかであるに違いありません。
" 仕事はどうするの?"、"耐えることができるの?"、"断食すると太るって本当?"
既に断食に関しての科学的な研究結果はたくさんあるようですが、今回は実際のところ断食をやったらどうなるのか、実施地アルジェリアの様子もふまえながら体験談をご紹介していきます。

ラマダンをするにあたって

ラマダンの1週間前から体を慣らす
ラマダンといっても、実はその人それぞれの体格や習慣そして状態によって感じ方が異なります。
そのため、普段間食が多かったり、タバコやコーヒーの量が多い人は、いきなりラマダンを始めると禁断症状や体調が悪くなったりします。
ですのでラマダン前には摂取量を調整したりして、みんなラマダンの準備をしています。
断食の時間を確認する
忘れてならないことは、その人の滞在している場所の断食時間の確認です。
ラマダンはマグレブと呼ばれる日没の礼拝時間に食事ができるようになりますが、このマグレブの時間は国外はもちろん、国内の離れた場所でも異なります。
理由はシンプルに日照時間の違いです。そのため、広いアルジェリアでは国内に時差はありませんが、滞在地域によってマグレブは数分から1時間以上の差が生まれるのです。
※ラマダンは毎年10日間ほど早まるので、季節によっても日照時間が変わります。
本当に辛いならやめていい
宗教行事、そしてラマダンと聞くとさらに厳しそうなイメージがあります。
しかし本当に辛くて体が耐えられない時などは、別の日に振り替えることも可能です。(ラマダン期間後、自身で設定します。)
国や季節によっては気温がものすごく高いところもあり、アルジェリアの砂漠地域などで「水を飲むように」と注意喚起を出していた時もあります。
ラマダンはもともと修行のように、自分を過酷な状況へ追いやり、感謝を学ぶ期間です。しかし他人に迷惑をかけたり、自分の限界を超え危険な状況に陥るまでやるものではありません。
集中力や危険を伴う仕事の人たちには断食をしない人もいます。病人や高齢者、妊婦(人による)などもやりません。そして旅行者も断食をしなくても良いとされています。
あくまで修行、自己責任の世界なのです。
ラマダン一カ月完全密着!日に日に変わる体と気持ち!?

今回は2020年4月25日から5月23日の約1か月間の記録をもとにラマダンの実態に迫ります。コロナウイルスが猛威を奮っている中での外出制限がある厳しい年でもありました。
ラマダン前日
翌日からラマダンということもあり、万が一のため、夜中にシリアルやパン、水などを食べたり飲んだりして体に溜め込もうとします。次の礼拝時間まで、つまりアルジェリア時間で朝方4時くらいまでは自由に飲食が可能ということですが、そんな遅い時間まで起きていることはできず。
ラマダン1日目
前日にたくさん飲んだ水も溜め込むことはできず、早朝のトイレで皆無に。普段お腹が空くと震えが来て低血糖に陥る人間でも、ラマダンをやるのだと構えていれば不思議と震えがくることはありません。人間の脳や体がよくできていることを知ります。
仕事がある人はもちろん働かなければなりません。アルジェリアの場合は一般的な労働時間が2時間ほど短縮され、休憩がなくなります。学校の授業時間も短縮されます。
そして働かない人たちは、昼間家で寝ていたりゆっくり過ごす人が多くなります。
驚くことに、夜中に郵便局や飲食店が開店したりするので、コロナウイルスがなければ夜中はとても賑やかになるのです。驚くべきことに、貧しい人向けに無料で食べられるレストランもあります!
ちなみにこの時期のアルジェリアのラマダン明けは19時半ごろ。ラマダン期間の夕食は特に品数も多く豪華なものを食しますが、日本と違ってスーパーでおかずが売っていることもなく、自分で作るしかないのが大変なところ。味見ができないのも難点です。
お腹が空いているにも関わらず、なぜかガツガツ食べることができません。そして食べていると体から汗が流れ始めるのです。食べ終わると体が重く、少し気持ち悪いような気がします。あと一か月も続くのかと気が遠くなってしまうのも初日ならでは。
昼間にあまり活動をしないと夜中目覚めるようになり、この日は朝3時ごろまで起きるようになりました。シリアルをがっつり食べておきます。
ラマダン2日目
やはり夜中3時に食べておくと朝に空腹感がなくなります。前半は夜食のおかげで掃除もなんなくこなせるほどの体力が維持できます。
しかしながら後半は一気に体が重く、片腕を上げるのも違和感があるほどに。
実は断食以外にも深夜起きていると寝不足の影響により体がだるくなってしまいます。ちなみに食べる前からの体重の変化はマイナス1kgです。
この日は眠気に襲われ朝3時ごろまで起きていることができず、一度寝てからギリギリ食べることができる時間に起きて夜食を食べることに。夜食を食べるとその分動けることを知ってしまったのでもう起きるしかないのです。
ラマダン3日目
3日目にもなると、だんだんと空腹感にも慣れてしまい、食べる直前までお腹が空いたという感覚があまりありません。
この頃から食後の体のむくみが気になるようになっていきます。特に足はなまりのように重く、食べた後はマッサージなどをすることにします。
ラマダン停止期間(数日)
女性の生理期間中のラマダンはしないことになっています。この期間はやはりしっかり食事をとらなければなりません。
この時ふと気づくことは、断食していない時の方が夕食をたくさん食べることができるということです。断食中は満腹感を感じる時間が早まるのです。
ちなみに断食している人は、意外と目の前でご飯を食べていても構わないと思う人も多いのです。なのでラマダンしていない人に強要することはありません。
しかしアルジェリアのラマダン中は、昼間のレストランが閉まっているので旅行の際はラマダンを避けた方が良いでしょう。
2週目以降
断食を再開すると振り出しに戻ったような悲しさがあります。体のむくみや、時には頭痛といった反応がもどってきます。
しかしそれも徐々に慣れていき車で外出することもできるようになっていきます。
3週目以降
そう、3週目突入ということは、やっと半分までたどり着いたということです。しかしまだ半分かと思うのが本音で、先はまだまだ長いと実感します。
アルジェリアはこの時5月上旬で、昼間は既に28℃くらいになっていました。
車で外出をしたり、体を動かすことに慣れてきていたので、散歩をしてみましたが、この暑さと空腹のせいかするべきではなかったと感じました。空腹を感じていなかったはずが、やはり体は嘘をつきません。しかし、地元の人たちは平気な顔をして歩いています。やはり何年もの慣れがあるのかもしれません。
実はこの3週目くらいで食べることに疲れてきます。1日1食、夕食(イフタールと呼びます)を目指して生きる日々。毎日同じような動作が繰り返されることに正直飽きます。そしてお腹を満たすことが面倒と感じるまでに。
4週目以降
最終週となりました。
コロナ疲れならぬ断食疲れが表れます。あと1週間という日数から、心の中でカウントダウンをし始めます。
ちなみに、ラマダンの終わりは国ごとに1日遅れる場合があります。それは前日に月が見えるかどうか。各国で月を観測しますが、観測できなければその国は翌日もラマダンを続けなければなりません。そのため国ごとにラマダンの日数に1日違いがあるのです。
アルジェリアは、月が観測できなかったので1日多い国のグループの仲間入りとなりました。
この時の失望感はもうお分かりだと思います。
そしてラマダン最終日のイフタールは達成感に満ち、疲れが滲み出ていた食卓にも活気が戻ってきました。