(4)Our Starsの持つ技術と検証内容
これまで、通信衛星の仕組みや衛星の位置制御の話について触れてきました。ではこれらの技術はどこまで実証されているのでしょうか。
どこまでゲームチェンジは現実に近づいてきているのか
宙畑 :非常に小さな衛星を開発する上での技術的課題はなんでしょうか。
野田 :いかに小さくしていくか、に尽きます。現状、衛星の大きさはピンポン玉サイズと話すことが多いですが、あくまで開発した結果たまたまそうなっただけです。技術的な流れとしては、これよりも小さなものになっていくのは自然だと思います。
稲川 :後は実装性の問題です。今、意味のある電子機器を作るとなると一番小さくてイヤホン・スマートウォッチくらいだと思っています。
実際どうなるかは、周波数・電磁力の制御関係・電力の問題がネックになると思います。ここは今後詰めていく必要のある部分ですね。
宙畑 :ありがとうございます。意味のある電子機器とありましたが、それはミッションとして何をするか、どんな機器が必要か、それらのサイズがどの程度か、によって決まると思います。
そういったところも踏まえて、このフォーメーションフライトの通信ミッションがどのような場所を狙って開発しているのか教えてください。
稲川 :やるべき市場の大きさでいうと、スマートフォンへの直接通信でブロードバンドというところの4Gくらいの速度を出せるところに大きなマーケットがあると思っています。
一方でそれに対するユーザーの数、必要な通信速度、その部分の回線設計というところまで行くと、いろんな仮定とかまともな計算をしないと、大きさ・個数・フォーメーションフライト自体の機数や一つのフォーメーションが何個のコンステレーションなるのかという所を決めなくてはならない。この辺りが今後詳細検討の必要なポイントです。
マーケットとしては4Gやデバイスに直接通信のようなものを考えると、緊急通信用やM2M(Machine to Machine)などの IoT 通信のマーケットもありますが、マーケットによってシステムが全く変わってくるので、今はっきりとこのマーケットに絶対行きますと明言はできないです。
あくまで、技術のデモンストレーションの段階で、アプリケーションとかビジネスの展開を考えているという状況です。そういう意味でミッションが決まりきっていないのが現状です。
宙畑 :ありがとうございます。まずは、技術をしっかり確立させる段階ということですね。
Our Starsが進めている実証内容や保有する技術

宙畑 :現在、技術を確立させる段階ということですが、実際に行った試験や技術実証といったことはあるでしょうか。
野田 :実は2月くらいにアンテナアレイ電波干渉試験を行いまして、現在は軌道上シミュレーションと先の実験を並行して進めています。
また、目途がついてきたので、7月にOur Starsから特許を出願しました。特許の内容については、第66回宇宙科学技術連合講演会で発表させていただきました。
(5)Our Starsが求める人材像 / Our Starsが見据える未来
Our Starsが求める人材像
宙畑 :これからを見据えて、どのような技術・知識を持つ人を採用したいかなどがあれば教えてください。
野田 :自分の頭で考えて、それを実現するためのものを作って、ちゃんとこれができるんだよっていうのを言える人です。片方だけではだめです。
勉強はよくできるけど、単なる机上の空論から出ないものづくりできない人は山ほどいますし、ものづくりはできるけど、人に言われないとできないような自分の頭で考えられない人もダメですね。
宙畑 :ありがとうございます。それでは、ビジネス的な観点で見た時、どのような人材を欲しているでしょうか。
稲川 :実現させるためには世界的な大きなビジネスとして、視野の高さと広さ、加えて他社も巻き込む力を持つ人を求めています。
宙畑 :なるほど、それはまさにゲームチェンジャーを担うためには必須の条件になりますね。
Our Starsが見据える未来
宙畑 :最後にお二方から、今後の展望など一言いただければと思います。
野田 :今までの話から、我々は小さな衛星と小さなロケットで小さくまとまった会社を作ると思われてるかもしれませんが、我々は全くそんなつもりはありません。
より小さな衛星を打ち上げ、それらが宇宙空間で増殖して、さらに大きなものを宇宙の工場で作っていく。そこから惑星間を超えて、インターステラーつまり恒星間飛行を本当に行うような大きな夢を抱いています。
稲川 :現在、ロケットの企業各社は人工衛星とロケットの価値を上げていくような事を考えていますが、我々も本事業はそういう活動の一環として行っています。
その中で、とにかく革新的で大きなマーケットを取りに行くことが大事だと思っています。日本からリモートセンシングの企業とか出てきてますが、通信事業で大きなところって、まだ実現できていないので、ここが取るべき領域かなと思っています。
なので、我々はそのようなブルーオーシャンな部分を新しい技術で獲得していく野望のもと、大きなマーケットにしていくという想いを持ちながら取り組んでいます。
宙畑 :ありがとうございます。我々としても、ゲームチェンジによって通信含めた様々な領域によい変化をもたらしてくれることを期待しております。本日はありがとうございました。
ここまで、Our Starsの垂直統合ビジネスにおける立ち位置やゲームチェンジに必要なコア技術に触れてきました。特許出願や試験実施などが進んできており着実に進んでいるように思えます。
現在、外部資金調達も進行しており、今後の動向に注目したいところです。ゲームチェンジが起きた時、世界はどのように変化しているのでしょう。それを直接見届けたい方はOur Starsの門を叩いてみてはいかがでしょうか。
提供元・宙畑
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