チャート:個人所得、前月比の項目別内訳
(作成:My Big Apple NY)
〇可処分所得 ・前月比2.0%増と12ヵ月連続で増加、前月は0.4%増 ・前年比は8.4%増と9ヵ月連続で増加、前月は4.4%増 ・実質ベースの可処分所得は1.4%増と7カ月連続で増加、前月は0.2%増 ・前年比は2.8%増と14ヵ月ぶりに増加、前月は2.3%減
〇貯蓄率 ・4.7%、前月の4.5%を上回り1年ぶりの高水準。2019年平均の8.8%以下が続くが、1959年のデータ取得以降で3番目の低い伸びとなった2022年6月につけた2.7%から改善基調を継続、過去最低は2005年7月の2.1%。
チャート:個人消費は、再び貯蓄を取り崩して拡大
(作成:My Big Apple NY)
〇個人消費支出(PCE)価格指数
Fedの積極的な利上げにも関わらず、前月比・年比はそろって加速し前月分もすべて上方修正された。
・PCE価格指数は前月比0.6%上昇、市場予想の0.5%を上回る、前月は0.2%(0.1%から上方修正) ・前年比は5.4%上昇、市場予想の5.0%を上回る、前月は5.3%(5.0%から上方修正) ・コアPCEデフレーターは前月比0.6%上昇、市場予想の0.4%を上回る、前月は0.4%(0.3%から上方修正) ・コアPCEの前年比は4.7%上昇、市場予想の4.3%を上回る、前月は4.6%(4.4%から上方修正)
チャート:1月はCPIが鈍化トレンドを継続も、PCEは再加速
(作成:My Big Apple NY)
――1月の個人消費の力強い伸びは、米1月小売売上高で指摘したように引き続き季節調整の下駄を履いている可能性があります。それでも、米2月ミシガン大学消費者信頼感指数・改定値と現況指数が2022年1月以来、期待指数が2021年12月以来の高水準だったようにセンチメントは改善。足元の米経済指標結果を受け、ゴールドマン・サックスは米1~3月期実質GDP成長率見通しを0.4%引き上げ、1.8%としています。
チャート:米1月ミシガン大消費者信頼感、短期のインフレ期待が著しく改善しセンチメントを押し上げ
(作成:My Big Apple NY)
インフレ動向については、モノからサービスへ需要がシフトするにつれ高止まりする可能性があります。ただ、CPIの約3割を占める住宅のうち、家賃は今後、恐らく春以降に減速する公算が大きい。オンライン不動産大手ジローが発表した米1月家賃提示価格は前月比で若干ながら下落し1,970ドルでした。2022年9月にピークをつけた1,987ドルから0.8%下落しています。従来、年初はインフレ動向などを鑑み上昇する傾向がありますが、足元の需要低迷を背景に今年はわずかに下落してスタートしました。また、全米人口の約4分の1を占める1980~1996年生まれのミレニアル世代の4人に1人は、実家暮らしというデータもあり、賃貸需要の減退は明白です。
先の話ですが、PCE価格指数の前年比が秋頃に下方修正される可能性もあります。J.P.モルガンのダニエル・シルバー米国担当エコノミストいわく「PCE価格指数は、データの年次修正による足元数カ月分の上方修正の影響を受ける半面、それ以前の下方修正が反映されていない」と指摘した上で、「足元の前年比の数値が高過ぎることを意味し、恐らく秋に来るBEA自身の年次改定で下方修正されるだろう」と予想しています。
Fedの金融政策を占う上で重要なインフレ動向高止まりが見込まれる半面、今後の家賃の伸び鈍化や年次改定なども留意しておくべきでしょう。

連邦準備制度ビル Wikipediaより
編集部より:この記事は安田佐和子氏のブログ「MY BIG APPLE – NEW YORK –」2023年2月25日の記事より転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方はMY BIG APPLE – NEW YORK –をご覧ください。