60歳以降も働き、給料と年金のダブルの収入で生活しようと思う人もいるだろう。しかし「在職老齢年金」という制度があり、給料が一定の金額になると、厚生年金の受給が減らされてしまう。この記事では、在職老齢年金によって受給が停止される条件を解説する。

在職老齢年金の受給額はいくらになるか?

在職老齢年金における年金受給額の計算方法を紹介しよう。

計算方法で出てくる用語を先に説明しておくと、「基本月額」とは老齢厚生年金の報酬比例部分の受給月額のことで、「総報酬月額相当額」とは当月の標準報酬月額に、その月以前の1年間の標準賞与額の合計を12(12ヵ月)で割ったものを足したものだ。

「総報酬月額相当額」については、賞与も含めた給料の月額平均に近い金額と考えてよいだろう。

在職老齢年金における年金受給額(月額)

基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円以下の場合、年金は全額支給される。

一方、基本月額と総報酬月額相当額の合計が47万円を超える場合は受給額が減額される。減額される金額(月額あたり)は【(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2】という計算式で算出する。

・計算例
基本月額が10万円、標準報酬月額が30万円、1年間の標準賞与額が120万円とした場合、「総報酬月額相当額」は【基本月額30万円+120万円÷12】=40万円となる。

次に減額される年金受給額を計算すると、【(基本月額10万円+総報酬月額相当額40万円-47万円)÷2=1.5万円となる。受給額のうち、1.5万円が支給停止(減額)されるということだ。

全額支給停止になるケース

減額される金額が大きく、年金受給額(年金支給月額)がマイナスになる場合、その期間は全額支給停止となる。所定の条件を満たした配偶者や子がいる場合に受給額に加算される加給年金分も、併せて停止される。

一方、在職老齢年金が減額・支給停止になった場合でも、老齢基礎年金は全額支給される。

定年後に働くことのメリット・デメリット

メリット 収入面でプラス、生きがいにもつながる

老後に働く最大のメリットは、収入だろう。仮に60歳で定年退職しても、現在の公的年金の支給年齢は65歳からなので、5年間は無収入の状態になる。定年後も働くことを選択すれば、一定の収入が得られ金銭面の不安も軽減されるだろう。年金以外の収入があれば、もしものときに備えて予備資金を蓄えることもできる。他にも、働くことが健康維持や生きがいにつながるという人もいるだろう。

デメリット 給与や健康面、年金カットの可能性も

老後に働くことには、デメリットもある。収入面では、現役時代より給料が下がるケースが多い。高齢になるほど、身体への負担も大きくなる。また、前述の通り給与額によっては年金がカットされる可能性があるので要注意だ。

年金受給額と収入を確認しよう

在職老齢年金制度は、給料を受け取りながら老齢厚生年金も受け取れる仕組みのことだ。

給料の月額と厚生年金の月額によって、年金の受給額が調整される。

給料が多くなると年金の一部または全部が支給停止となるため、ご自身の年金受給額と収入額 を確認しておこう。

2022年からは支給停止の要件が緩和され、60代前半の人は働きながら年金も満額受給することがさらに容易になった。厚生年金だけでは生活費が不十分な人も多いため、60歳以降も少しでも長く働くことを検討するのも良いだろう。

文・MONEY TIMES編集部