60歳以降も働き、給料と年金のダブルの収入で生活しようと思う人もいるだろう。しかし「在職老齢年金」という制度があり、給料が一定の金額になると、厚生年金の受給が減らされてしまう。この記事では、在職老齢年金によって受給が停止される条件を解説する。

定年後に働くことのメリット・デメリット

メリット 収入面でプラス、生きがいにもつながる

老後に働く最大のメリットは、収入だろう。仮に60歳で定年退職しても、現在の公的年金の支給年齢は65歳からなので、5年間は無収入の状態になる。定年後も働くことを選択すれば、一定の収入が得られ金銭面の不安も軽減されるだろう。年金以外の収入があれば、もしものときに備えて予備資金を蓄えることもできる。他にも、働くことが健康維持や生きがいにつながるという人もいるだろう。

デメリット 給与や健康面、年金カットの可能性も

老後に働くことには、デメリットもある。収入面では、現役時代より給料が下がるケースが多い。高齢になるほど、身体への負担も大きくなる。また、給与額によっては年金がカットされる可能性があるので要注意だ。具体的には、給与が一定額を超える場合、年金が一部または全額もらえない場合がある。

在職老齢年金制度とは

会社などに勤めながら老齢厚生年金を受け取る仕組みを、在職老齢年金制度と呼ぶ。年金の受給額は月給や賞与によって減額され、場合によっては全額停止となることもある。

在宅老齢年金制度で重要なキーワードは2つ。まず、「総報酬月額相当額」はボーナス込みの年収を12で割った額だ。

次に老齢厚生年金の「基本月額」とは、加給年金額を除いた老齢厚生年金(報酬比例部分)の月額のことで、老齢基礎年金の部分は含まない。 総報酬月額相当額と老齢厚生年金額によって、年金が全部受給できるか減額されるかが決まる。

1ヵ月当たりの老齢厚生年金の受給額と総報酬月額相当額の合計額については、47万円を超えるかどうかが基準となる。

47万円以下なら全額支給されるが、47万円を超えると、その一部または全額が支給停止 である。

基本月額と総報酬月額相当額との合計が47万円を超える場合の年金受給額は、下記の計算式のとおり。

基本月額-(基本月額+総報酬月額相当額-47万円)÷2

例えば、基本月額が25万円で総報酬月額相当額が30万円の場合、25万-(25万+30万-47万)÷2 = 17万円となる。

年金はなくなるのか?――制度崩壊の可能性は低い

少子高齢化が進むことは間違いないので、いずれ年金制度はなくなるのではないかと思うかもしれない。年金自体はなくならなくても、年金額があまりに少額であれば意味がない。具体的に、将来の年金はどの程度頼りになるのだろうか。

年金の財源は、保険料だけでなく、税金や積立金も含まれる。積立金はなくなることがあっても、保険料は現役世代がいる限りなくなることはない。また税金は日本に人がいる限りなくならないため、年金制度自体が崩壊する可能性は低い。

問題は、財源が少なくなって年金制度の価値がなくなることだ。極端な話、将来もらえる年金が1ヵ月5,000円になれば、誰も年金制度が必要とは思わないだろう。

定年後の人生計画も早めに考えておこう

定年後も働きたいと考えている人は多いだろう。しかし、現行の制度では、稼ぎすぎるともらえる年金が減ってしまうので注意が必要だ。年金制度は改正が多いので、定年後の人生プランも考えつつ、最新情報をキャッチアップしながら豊かな老後を目指したいものである。

文・MONEY TIMES編集部