この課の担当者たちには、水素・アンモニア事業の費用対効果を、ぜひ「正直ベース」で出していただきたい。アンモニアは水素を原料とするのに、アンモニアの単価が水素より安いなどという、噴飯物の見積もりではなく。

この例に限らず、日本の科学技術政策の多くは、確たる科学・技術的根拠などを当てにせず「イノベーションの促進を目的」とか「選択と集中」とかの漠たるスローガンの下、聞く耳持たずで猪突猛進してきたように、筆者には思える。その裏には、糸を引く御用学者、利権に群がる政治家と官僚、補助金に群がる企業や御用マスコミなどによる、強固な利権複合体が形成されているのだろう。「産官学政報」複合体とも言う、各種「ムラ」の存在が、それを裏付ける。

南海トラフ地震のリスクを無視したリニア新幹線、何の根拠もなく寿命が40年から60年に延びた原子炉、福島の「廃炉」や後始末が全然できず、使用済み核燃料の捨て場も全く決まらない中で進められている原子力政策など、コロナ・脱炭素以外にも実例には事欠かない。

ここでは、何人かの良心的な学者が提示した「正論」は何ら力を持たず、科学や技術は、ほとんど「隠れ蓑」にさえなっていない。根拠も論理もボロボロで、欠陥や不足点が丸見え・丸出しになり、隠すことさえ出来ていないからだ。

にも拘わらず、批判は無視または冷笑し、没論理でしゃにむに暴走する。この有様は、戦前の大政翼賛会・ファシズムの台頭時を連想させる。実際、科学技術政策が最も先鋭的に暴走するのは、軍事技術分野なのだ。この事態にどう対処すべきか、かなりの難問だが、今後の考察課題としたい。