目次
これからAIと著作権はどう変わっていく?
AIはもう止められない。創作の現場はどう向き合うべきか
これからAIと著作権はどう変わっていく?
出井:
AIについては新しい議論が多く、私自身も模索をしている状況です。現在は内閣府でも、めまぐるしく変化するAIの利活用状況を把握しようとしている段階にあります。
AIと著作権法に関する議論については、平成30年以降停滞している感がありましたが、Stable Diffusionの登場がトリガーとなってまた検討が始まるのではないかと思います。
ぽな:
今、国の方でも「Society5.0」ということで、AIやロボットを積極的に活用していく方針であると伺っています。まさに、今こうした状況を踏まえた新しいルールが作られつつある段階ということでしょうか?
出井:
AIに関しては著作権法以外でも、さまざまな分野で政策が検討されています。
ただ、どうしても法律だけじゃカバーしきれないところもありますので、ガイドラインを制定するとか、市場原理や新しい技術なども活用しながら望ましい方向に社会を作っていく必要があると思います。その際には、誰がどのような役割を担うべきかについて、事業者なども交えながらヒアリングしていくことも重要と考えます。
ぽな:
多くの人に話を聞くことが大切なんですね。
出井:
はい。政策を決める際には、一部のステークホルダーだけでなく、さまざまな業界のコンセンサスを取ることが重要なので。
AIであれば、クリエイターさんだけでなく、一定の制約を背負うことになるAIの技術者、開発者、事業者の話も聞いていく必要があります。
ぽな:
政策ってみんなのものですし、なるべく多くの人を納得させるためにも「AIで作品を作るなんてけしからん」という声ばかりを拾うわけにもいきませんよね……。
出井:
もちろん、「やめろ」「反対」という意見もわかるんですけど、AIの活用全てをやめちゃうとイノベーションがなくなっちゃいますからね……。
一方で、「技術の過渡期なんだから、馬車が自動車に変わっていくように、仕事自体が変わっていくのも当然だろう」という考え方もあります。ただ、それで本当にいいのか、というと議論の余地があると思います。そのあたりのバランスをどう取るかですよね。
ぽな:
まさに、現在進行形でいろんな問題が出てきて、また今後議論も動きうるというところですね。
AIはもう止められない。創作の現場はどう向き合うべきか
出井弁護士に伺って改めて気がつかされたのは、AIに関するさまざまな議論やトラブルは「これからの社会のあり方」に関する問題なんだということでした。
現在、AIで作った創作物については世界中で論議が巻き起こっている状況ですが、個人的には、AI技術の発展は止められないし、倫理的に一定の歯止めは必要とはいえ、止めてはいけないことのようにも思います。
よりよい未来の形を考えるためにも、今の自分の立場にとらわれすぎず、幅広い視野で物事を考えていく必要があるのではないかと、と感じました。
AIによって創作の現場がどう変わるのか。ひとりのクリエイターとして、引き続き注視していきたいと思います!
(執筆:紀村まり(ぽな) 編集:少年B 監修:骨董通り法律事務所 出井甫)
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