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2022年4月に 内閣官房孤独・孤立対策担当室は、直前に実施した全国調査「人々のつながりに関する基礎調査」(以下、「つながり調査」と略称)の結果概要を発表した。
これは21年12月1日から調査票を発送し、22年1月21日までの回収分のうち、有効回収と判断される調査結果に関する単純集計として公表された。科研費を使ったとしても、費用的にも時間的にも個人ではもはや不可能な全国調査であり、貴重なデータベースとして配偶者の有無と孤独感の項目を拾い上げ、統計的な処理を行って分析しておきたい。
調査の対象は全国の満16歳以上の個人であり、調査対象者数20,000人は住民基本台帳を母集団とした無作為抽出法により選定された。郵送による回収が77.4%であり、オンライン回答が22.6%となっていて、全体としては59.3%の有効回収率であった。この回収率は今日では満足できる数値であろう。
未婚の増加が少子化の主因これまでに明らかにしたように、人口動態面の最大の特徴である少子化は、出生数が落ち込む、年少人口数が減少して比率が下がる、高齢化が進行する、市場が縮小する部分と増大する部分が鮮明になる、社会全体の活力が低下するなどとして現象する(金子、2003;2006)。
そして前稿(金子、2023a)では、日本のような婚外子率が2%程度の国では、出生の大半は既婚者からなので、未婚率の上昇がそのまま出生数を減らして、少子化が加速されることを論じた。
しかし、誰でもそうだが未婚すなわち単身者の老後には、その個人を取り巻く社会的連帯と孤立といういわば社会学固有の課題が残されている。とりわけ、「連帯と孤独・孤立」は、社会学の成果が医学の側からの「長寿の要因」の一部にも活用されるという意味で、学術的にも注目されてきたテーマである。
社会的ネットワークが個人の健康状態を左右するたとえば、「友人や親戚との社会的ネットワークが多岐にわたる人は、社会的に孤立している人に比べて、不安感や抑うつの程度が低く、健康的で死亡率も低い。その他の研究でも社会的なつながりのある人たちは、他者への共感力や信頼感が高く、協力的であることが示されている」(フォンタナ、2020=2022:315)という指摘がある。
これは長寿のための25のメソッドについて研究成果をまとめたフォンタナが、わざわざ22番目の長寿メソッドとして挿入した節の一部である注1)。
この場合重要なことは、孤独(loneliness)と孤立(isolation)をしっかり区別しつつ関連づけておくことである。孤独は主観性に富むが、孤立は関係性の中で判断できる。この方面では社会的接触(social contact)概念を操作化して、この「長さ・頻度・量・深さ」などのデータが収集されて、その分析結果が対象者集団の「社会的孤立」をめぐって長年にわたり論じられてきた。