2022年はコロナ禍に加えて物価も上昇したことから、倒産した企業の顔ぶれにもその影響が見て取れる。2022年倒産した企業の中から、負債総額トップ10をピックアップして、更にその企業を倒産の要因ごとに分類してみた。

2022年倒産した企業

1.マレリHD(旧カルソニックカンセイ)(負債総額約1兆1,330億円)

日産自動車系の部品会社であったが、2017年に外資系ファンドの傘下に入る。納品先の日産自動車の低迷とコロナ禍が重なり、今年6月に民事再生法の適用を申請。負債総額の1兆円超えは今年最大規模で、新型コロナに関連した経営破綻の中でも最高額である。

2.ディー・エー・ピー・テクノロジー(負債総額約130億円)

大日本印刷と旭硝子(現AGC)の合弁会社で薄型TVに使われるプラズマディスプレイパネル用背面板を生産していた。供給先である大手家電メーカーの事業縮小に市況悪化が加わり、今年7月に特別清算開始命令を受けた。

自前の発電所を持たない新電力事業者は、電力大手や卸電力市場から電力を調達して契約者に提供してきた。しかしロシアのウクライナ侵攻がエネルギー価格の高騰を招き、新電力事業者の多くが販売価格より仕入れ価格が高くなる「逆ざや」の状態に陥ってしまった。

3.富士たまご他7社(負債額調査中)+イセ食品グループ(負債総額約449億円)

富士たまごは、イセ食品を中心とするグループ企業の1社である。外食産業の不振や飼料価格の高騰で収益が圧迫されていたイセ食品が、今年3月に債権者から会社更生法の手続きを申し立てられた。富士たまごを含む関連7社も一体改革の道を選び、今年11月に会社更生法などを申請する。今後は簡易再生手続きに移行する見込みである。

巣ごもり消費によるコロナ特需も発生したが、その後の舵取りに失敗して経営が行き詰まるケースも散見される。事業の多角化やフランチャイズ戦略、世界展開が裏目に出たケースも多い。

4.SH東雲堂(負債総額約193億円)

地域最大手の書店チェーンとして、広島県、岡山県、山口県を中心に幅広く事業(レンタル事業やカフェ経営など)を展開していたが、2019年に不正会計が発覚したことで金融機関の支援を受けていた。事業再生ADRを経て(事業は新会社のフタバ図書に移管)、今年5月に広島地裁より特別清算開始決定を受けた。

5.医療機器卸ジェミック(負債総額約100億円)

親会社であるアイテックの医療機器販売部門として、多岐にわたる医療機材を取り扱っていた。もともと利益率が低いところに、アイテックの民事再生法申請で連鎖倒産に追い込まれる。今年11月東京地裁に破産を申請した。医療機器卸の倒産としては過去最高の規模となる見込み。

介護事業者の倒産が過去最多を記録

昨年倒産した企業は、もちろん前述したものだけではない。東京商工リサーチによれば、2022年1~9月の「老人福祉・介護事業」倒産は100件だ。前年同期比で約2倍に急増しており、介護保険法が施行された2000年以降で過去最多となった。

介護倒産は、新型コロナ感染の影響で2020年に過去最多を記録した。2021年は「介護報酬のプラス改定」や「ゼロ・ゼロ融資」などの支援により急減していたが、2022年は一転し、過去最多ペースとなっている。

少子高齢化が進み、介護ニーズが増加しているにもかかわらず、なぜ介護倒産が急増しているのだろうか。

介護事業は、以前から「ヘルパー不足」「従業員の高齢化」「他業種からの新規参入」などの課題を抱えていた。そこに新型コロナによる利用控え、業務負担の増加が加わった形だ。

2021年は、新型コロナ関連の支援策で何とか持ち直した。しかし、2022年は物価上昇により運営コストが増加し、経営環境はますます厳しくなっている。大手の連鎖倒産も発生しており、今後さらに介護倒産が増加する可能性もあるだろう。

2023年も大型倒産が続くか

円安・物価高トレンドはまだ続き、コロナ禍の爪痕も色濃く残っている。2023年も大型倒産のニュースが出てくる可能性は高い。職を失ったり、サービスを受けられなくなるなど、自分や自分の周りに影響がある可能性も考慮し、今のうちからリスクに備えておくことも大切だろう。

文・MONEY TIMES編集部