家計の純金融資産は順調に増えていますが、純金融負債の中で政府の割合が大きな国です。

企業の純金融負債は2000年代後半から停滞気味です。

オーストリアは海外が純金融資産プラスからマイナスへと変化し、ベルギーは海外の純金融資産マイナスが継続しています。

資金過不足を見ると、両国とも政府と海外が赤字主体です。

オーストリアはリーマンショックまでは企業が赤字主体で、その後は黒字主体化しています。やや1990年代後半の日本に似た変化ですね。

両国ともリーマンショック後に政府の赤字水準が大きくなっています。

企業も黒字主体化しています。

比較的ドイツやフランスに似た傾向のように見受けられます。

4. オランダの純金融資産・資金過不足

最後にオランダの状況を見てみましょう。

図5 純金融資産・資金過不足 オランダOECD統計データ より

図5がオランダのデータです。

とても特徴的ですね。

純金融資産のグラフを見ると、家計の純金融資産は増え続けていますが、海外が純金融資産プラスからマイナスへと変化しています。

政府の存在感は小さいですが、企業の純金融負債が一度目減りして停滞気味です。

資金過不足を見ると、目につくのが企業が大きな黒字主体となっている点です。家計よりも大きいですね。

そして政府と海外が赤字主体ですが、海外の方がボリュームが大きいようです。

企業がこれだけ黒字主体化しているのは、日本に似ています。企業の黒字水準の大きい国は、オランダ、日本、デンマーク、スペインくらいですね。

日本は主な赤字主体が政府でしたが、オランダは海外のようです。

海外からオランダへの投資が減り、オランダから海外への投資が上回っている状況がわかります。

海外の純金融資産が減るのと、純金融負債が増えるのは同じ方向ですので、資金過不足では全期間にわたって海外が赤字主体という事になります。

5. 西欧諸国の純金融資産・資金過不足の特徴

今回は西欧諸国の純金融資産と資金過不足についてご紹介しました。

スイスやルクセンブルクを始め、海外への投資が超過している国が多いようです。

オーストリアとベルギーは政府の純金融負債が大きく、企業の純金融負債が停滞気味でフランスやドイツなどに近いようです。

ルクセンブルクは政府が純金融資産プラスな点が特徴的ですね。海外への投資から、国内企業への投資も含めた経済構造へと変化が見られます。

最も印象的なのがオランダです。

企業が大きく黒字主体化していて、純金融負債が停滞しているのは日本に似ています。海外への投資が大きく増えているのも日本に似ていますが、政府の純金融負債はそれほど大きくありません。

地域ごとに似ている傾向の国が多いですが、それぞれの国の特徴も浮き彫りになって大変興味深いですね。

皆さんはどのように考えますか?

編集部より:この記事は株式会社小川製作所 小川製作所ブログ 2023年2月10日の記事を転載させていただきました。オリジナル原稿を読みたい方は「小川製作所ブログ:日本の経済統計と転換点」をご覧ください。