日本は、今回米軍がやった撃墜はやらないし、できない。米国のような調査能力もない。多分、中国から飛来したものと思いつつ、断言もできない。証拠もないので、当然、抗議もできない。結局、指を咥えながら、見ていただけ。
当時の防衛大臣の河野太郎は、心配している国民の気持ちを代弁。「戻ってくるのでしょうか?」という記者の質問に「気球に聞いて下さい」と答えた。冗談かと思ったら本気。日本政府は領空を侵犯され、各種データを収集されたのに、まるで他人事。内政干渉なので、踏み込んだ批判や記者発表などやらなかった米国は本当に呆れた。相変わらず、極楽トンボの日本だ。同盟国として有事の時、一緒に戦う気も失せる。
中国からと思われる気球が飛んだ地域には「三沢基地」がある。さらに中国と北朝鮮などからのミサイルと受けて立つはずの「イージス・アショア」建設予定地の秋田も近い。
「イージス・アショア」は、筆者が20年くらい前に日本に紹介した。ペンシルバニア州を訪問。まずあり得ない施設内部の映像を撮り、日本で放送した。当時、専門家・当事者・関係者以外は誰も知らなかった。
いまでも、イージス艦と地対空パトリオット・ミサイル(PAC3)は、日本防衛の要。中国。北朝鮮などからの攻撃から日本本土を守る。
筆者はハワイなどで日米防衛訓練を現地取材した。日米のイージス艦にも乗り込み、海自のカレーも食べた。ミサイル防衛の効果、正確さなどで、世界的に有名な米国の専門家数人の話も、直接対面で話を聞いた。
そこで分かったこと。簡単にいうと、飛んで来る弾丸をこちらが弾丸を発射して撃ち落とす。どれだけ難しいか、本当に当たる確率が低いのだ。
数年前か、イージス艦とPAC3では日本防衛に充分でないことが判明した。イージス艦増強や補充が人員育成などの問題で、できない。だからこそ、地上にイージス艦を乗り上げたといえる「イージス・アショア」が重要になる。
だがこれも信じられないことに、地元の反対で頓挫した。日本は自国防衛を真面目に考えていないとワシントンで囁かれた。
東北に3年前に飛来したスパイ気球。一応、破壊措置命令というものがある。日本の法律では「落下する恐れがある場合に撃墜できる」と聞いた。だが落下する可能性はなかった。つまり手を出せなかった。そもそも河野大臣の言葉に代表される。調査する気も、手を出す気もなかった。
そして9条。いまの日本は「来襲するミサイル」を想定、偵察気球など全く想定していない。
世界が認める個別的自衛権行使になり得る。日本の憲法学者は多分、反論するだろうが、万が一の撃墜が法律違反、憲法違反になるとは思えない。
この東北に飛来した気球により、自国領土を侵犯され、多分だが、日本の各種データを勝手に盗まれた。
気球のように派手ではないが、東京で中国、ロシアの諜報員が、水面下で暗躍しているのはほぼ間違いないと、米国は考えている。
落下するかどうかなど関係なく、領空侵犯されたら、すぐに撃墜するようにすべきだろう。航空自衛隊にはその能力がある。法改正も視野に入れて、こんな舐められた領空侵犯されたら、撃墜する姿勢を、中国などにみせるべき。抑止になることをするべきだろう。米軍が一緒に戦いたくなくなる。
思い出した。30年近く前、筆者は「キューバ危機」の取材で、米空軍基地に、U2偵察機を見に行った。いつもみる画像では、なにか玩具のようにみえる。だが本物はかなりでかい。車で引っ張り、グライダーのように滑空した。20キロ以上の超高高度を飛行するため、パイロットは宇宙服にも似た特殊な服を着る。お願いしたが、同乗は許されなかった。そもそも操縦席は1人しか乗れないが、得意の「そこを何とか」と言ったら、笑われた。
1960年代、このU2偵察機が、ソ連領空を侵犯して撃墜された。
それ以前も少しやっていたが、米がソ連の領空に入り、こっそり写真撮影を中心に偵察した理由の1つは、ソ連がキューバに核ミサイルを持ち込んだことへの対抗だった。
筆者はキューバ島のジャングルを分け入って、ソ連軍ミサイル基地の現場にも行った。キューバ人が運転するトラックの荷台に乗って、ミサイルが配備されていた場所に立った。
国際政治だから当たり前。双方に言い分があるが、全面核戦争のことを脳裏が過り、本当に背筋が凍った。
筆者は普通の現地取材、当事者・関係者に話を聞きたいだけだった。だが外国スパイを取り締まるキューバ内務省は、米国から来た筆者を、CIAの諜報員のように扱い、最後は国外追放のような形で、キューバを出た。
一方の米国もキューバを経済封鎖のような扱い。キューバ国内ではお金を使えない。筆者はキューバ入国の証拠を隠滅した。もう時効なので言えるが、たまたま高校の同窓生が外務省にいて協力してくれた。現地(生)取材は、いろいろな困難が伴う。
キュ―バに配備されたソ連の核ミサイル。近距離なので、米にしたら喉元に突きつけられたナイフ。生きるか死ぬかだった。
高高度を飛ぶ米国のU2偵察機は、気付かれず、ソ連のミサイルに撃墜されないはずだった。だが偶然が重なり、”運よく”ソ連の地対空ミサイル軍は、撃ち落とした。米空軍操縦士は、所持していた自殺用の薬を飲まなかった。軽傷で拘束され「生き恥」を晒すことになった。家族にも聞いたが、悪名高いソ連諜報の尋問で「針のむしろ」だった。
U2はソ連軍ミサイルで撃墜された時、高高度約20キロ以上。今回米軍が撃墜した中国のスパイ気球も、ほぼ同じ20キロくらい上空を漂っていた。
迎撃したのは、米空軍の最新鋭ステルスF22。F15 でもよかったが、やはり高度が足りず、その分ミサイルの精度が落ちるので、F22にしたと聞いた。下からのミサイル発射よりも、ほほ同じ高度からのほうがミサイル推進力の問題が起きない。相手は30メートル以上の巨大な気球、速度も遅い。外すことはあり得ない。空対空・画像誘導ミサイル1発で撃ち落としたと聞いた。
1960年のU2撃墜事件。米側はそれまで収集した画像情報を公開した。筆者は撮影して分析した米諜報官やCIA担当官にも直接話しを聞いた。U2偵察機の画像は超高高度から撮ったものだが、かなり鮮明だった。
「米国はウソつきだ。そんなものあるはずがない」と高らかにソ連が世界に断言したもの、そのソ連の核ミサイルが、キューバ島のジャグルに配備されている写真があった。
米国は国連でソ連代表に聞いた。「貴国は本当にキューバに核ミサイルを持ち込んでいないか? Yes かNoか、2択で答えろ」
米としては、どうせいつものようにソ連は嘘をつくだろうから、その時、画像を証拠として”嘘つき”ソ連代表に「なに?ではこれはなんだ?」突きつけようという作戦だった。
ソ連の代表は「そもそもそんな言い方をされる筋合いはない」と、逃げた。
その時、世界は事実を確信した。