さて、2023年を考えるにあたり、かつての役人時代の同期の仲間や同僚たちと年末年始などに食事をしながら意見交換を重ねた。浮かび上がってくるのは、今年は日本とASEAN50周年記念だったり、言うまでもなくG7広島サミットがあったりと、日本外交にとってとても重要な年である、ということだ(まあ、毎年重要ではあるわけだが)。

まずは、5月のサミットにどう対応するか、ということが鍵になる。もちろん、広島で開催されることの意義を想えば、核なき世に向けた努力を訴えることは一つの選択肢であり、重要な視点ではあろう。

あまり目立っていないし、地味に評価されているに過ぎないが、岸田総理は日本の総理として初めて、昨年の夏、NPT(核不拡散条約)の運用検討会議に出席して演説するなど、被爆地広島出身の政治家・総理として、並々ならぬ気合で核のない世の重要性・必要性を訴えては来ている。

ただ、ロシアがウクライナ侵略をして核使用をチラつかせたり、北朝鮮が一体どこから資金を調達しているのかと不思議になるほどのペースでミサイルをぶっ放し続けたり、中国が習一強体制を確立して台湾侵攻を企てていたりする中、すなわち、日米同盟の強化や核の傘の中にいることの必要性が増している現状では、単に「核なき世」を訴えても、まさにポエムで空疎な響きとなりかねない。

その点に関して、先日、外務省の高官に直接疑問をぶつけてG7への臨み方について返答を得る機会を得たが、書いて良い範囲で言えば、① G7の結束と力をどう示すか、② 影響力を持ち始めているグローバル・サウス(ASEANや中東・アフリカの新興国など)の取り込み、③ 上目線の教条主義ではないメッセージの発信(例えば「人権」「正義」を振りかざすと、却って嫌われて結果を出せないのでそれに変わる現実的メッセージ)、が鍵になるという見解であった。

①に関して言えば、今後、サミット議長国としての日本が、いつ招請を受けているウクライナに行くか(行かないか)、行くとしてどういう「お土産」を持参するのかが一つのカギになるし(極めて困難)、②や③も言うのは簡単だが、実現することは容易ではない。だが、極めて冷静に限界と可能性を見据えている、と感じたことだけは明記しておきたい。

詳述は避けるが、長時間にわたる高官の説明の中で、①~③のそれぞれについて、さすが日本の頭脳集団たる外務省、と思わせるような考え抜かれた戦略と文言、具体的アプローチを感じたわけだが、とはいえ、それを具体的に表現するとなると、玄人向けには良いにせよ、市井の方々からみると、ほぼ何のことやらわからない首脳間の合意や共同声明の発出となりかねない。その点はやや残念で、懸念をしているところである。