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休む暇なんてない!工程
様々なイードのお料理

休む暇なんてない!工程

もちろん喉を切ったからといってすぐ食べれるわけではありません。お肉屋さんで見る状態になるまでにはまだまだ時間がかかります。

皮を剥ぐ

犠牲祭 「イード」 の真実!アルジェリアより密着レポート
(画像=『たびこふれ』より引用)

ナイフだけで皮を剥ぐのは実はとっても大変です。そのため剥がしやすくするために空気を入れるのです。

どういうことかというと、羊を横にした状態のまま、皮と肉の間に穴をあけます。そこに空気を送る機械 (または自転車のタイヤに空気を入れるような手動のもの) を使って、空気を送り込みます。

そうすると、たちまち羊が膨れ上がり皮がピンと張り、剥がしやすくなるのです。

その後皆でナイフを使い、皮を剥がしていきます。ちなみに皮はしっとりしていて、まるでそら豆の内側のよう。

全ての革製品は、こうやってできていくのです。この皮は翌日に国が回収し、さまざまな皮製品として生まれ変わります。

足や頭を切る

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(画像=『たびこふれ』より引用)

皮を剥がしながら、足や頭を切ります。

羊は全て食べることができるといわれている動物ですので、この足や頭も料理に使う事ができます。しかし体毛があるため、バーナーで体毛を焦がして削り取ります。そしてヒズメは取り除きます。

内臓を取り出す

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(画像=『たびこふれ』より引用)

横に倒していた羊を今度は後ろ足を束ねて吊るします。

お腹を開き、内臓を一気に取り出す、、、その前に一番大切な工程があります。

それは、胆のうを探し出すこと。

胆のうとは緑色をした小さめの臓器ですが、中にとても苦い汁があります。他の内臓を取り出す際に間違って胆のうを破裂させてしまうと、その汁が他の臓器や肉についてしまい、臭いなどが染みついて食べることができなくなってしまいます。そのため胆のうをまず見つけ出し、取り除いてから他の臓器を一気に取り出します。

ここまでの工程が終わり、はじめてお肉屋さんで見かけるような"肉"の状態になるのです。

内臓を綺麗に洗う

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(画像=『たびこふれ』より引用)

取り出した内臓はその日のうちに綺麗に洗います。もちろん内臓も残すことなく食べることができるからです。胃などはスプーンなどで削るようにして洗っていきます。

お肉の解体

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(画像=『たびこふれ』より引用)

少しの間吊るして干していた羊肉は、最後に切る作業となります。太い骨なども切らなければならないため、かなりの力仕事となります。

ちなみに、この日の冷蔵庫や冷凍庫には、どこの家庭も羊肉でいっぱいに。

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(画像=『たびこふれ』より引用)

様々なイードのお料理

このように長い時間をかけてやっと食べることのできる状態になったものを調理していきます。解体した初日は主に内臓を最初に調理します。

今回はイードによく食べられる料理を紹介します。

Bouzellouf(ブズルゥーフ)

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(画像=『たびこふれ』より引用)

こちらは、クミンをたっぷり使った羊の頭と足を煮込んだ料理です。日本でいう、角煮や豚足料理と似たものです。コラーゲンたっぷり?だと感じられるようなプルプル食感。

Osban(オスバン)

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(画像=『たびこふれ』より引用)

こちらはインパクト大な羊の胃を使った料理です。

綺麗に洗った羊の胃を袋状に糸で縫い合わせ、中にお米やひよこ豆、お肉、家庭によって羊の肺なども詰めていきます。キャラウェイなどの香辛料で味付けしたしっかり臭いを消すピリ辛の赤いソースとともに煮詰めます。とても手間がかかる料理ですが、人気があります。

この胃の料理は少し驚くかもしれませんが、日本でいうモツ煮込みのような雰囲気。胃自体の味や食感もほぼ同じです。

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(画像=『たびこふれ』より引用)

羊の脳みそ

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(画像=『たびこふれ』より引用)

これまた驚くべき料理ですが、羊の脳みそを使った一品。

羊の脳みそは体と比較してもかなり割合が少なく、量はそんなにありません。

この料理も見た目はスクランブルエッグのような卵のようです。味はクミンなどの香辛料を入れ、ニンニクをたくさん加えたもの。意外にも羊の脳はとてもマイルド。臭みなどはまったく感じられません。知らないままだと卵だと思ってしまいそうです。

ちなみにこの料理にrognion blanc (ロニォン ブロン) と呼ばれる羊の精巣(魚でいうと白子)を加える家庭もあります。羊の精巣はまったくニオイも味も強くなく、食感はふわっとしているため言われないと分からないくらいです。

羊の肝臓と心臓

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(画像=『たびこふれ』より引用)

肝臓はいわゆるレバーです。レバーはイードでなくても串焼きなどとして売られています。アルジェリアでは鶏レバーより羊レバーのほうが一般的です。心臓も日本では鶏のハツが知られていますが、羊のハツも同じように食べられます。

味付けは日本の焼き鳥屋さんのような感覚で、塩こしょうなどシンプルです。

Brochettes(ブロシェット: 串焼き)

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(画像=『たびこふれ』より引用)

串焼きを意味します。イードでなくても食べられているもので、外食として串焼き屋さんなどもよくあります。イードでは、自分たちで串に刺してBBQ感覚で食べる家庭が多いです。

ラムチョップ

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(画像=『たびこふれ』より引用)

こちらも定番メニュー、日本で羊肉料理といえば思い浮かぶ人も多い一品ですよね。

他にも色々な部位の料理がありますが、どこの家庭もできるだけ無駄なく調理しています。

アルジェリアの羊は基本的に雄のみ食されます。そして、日本では羊肉のニオイに抵抗がある方も多いですが、日本の羊肉と比べるとニオイはそんなに強くなく美味しいです。

さらに、日本ではヘルシーなお肉として知られる羊肉ですが、残念ながら霜降り肉などがないアルジェリアではお肉の中でも脂が多いといわれていて、健康にはあまり良くないイメージであります。