組織アンラーニングの3つの階層とレベル
ここで、大事なのが、組織アンラーニングを推進するためには、逆説的ですが、一人ひとりの「個人のアンラーニング」が出発点になります。
特に、経営幹部などのトップ層がアンラーニングしなければ、組織はアンラーニングできません。
スタートアップは特に、経営幹部層が華やかなキャリア経歴を持つことが多いですが、前職での経験やスキルに環境もカルチャーも違うにもかかわらず依存しすぎてしまうことも少なくないのが現状です。
このように、組織アンラーニングは個人のアンラーニングがきっかけとなることが多く、また環境に適応しなければならないのは個人も組織も同じです。
近年はさらに、新型コロナ感染拡大による環境変化がきっかけとなって、リスキリングなどとともに「個人のアンラーニング」に注目が集まるようになりました。
さて、ではどのようにして個人のアンラーニングを進めていけば良いのでしょうか。
その鍵を握るのは、個人レベルにおける「マインド」になります。
その説明に入る前に、組織アンラーニング3つの階層についてお話します。
①組織表層的なアンラーニング
これは公式的、かつ、表向きに行っている組織の行動ルーティン、つまりは仕組みや手続き、システムなどのことを指します。例えば、無駄な業務遂行を効率的な業務遂行にする仕組みや属人化された情報管理構造をオープンな情報管理構造にする仕組み、などが当てはまります。
②組織深層的なアンラーニング
これは長年、組織に埋め込まれ、引継ぎ、染み付いたカルチャーそのものの源である「組織信念」のことを指します。組織も人の集合体であるため、無意識レベルで組織が持つ「場の力」があります。「組織マインド」とも表現できます。
③個人のマインド的アンラーニング
これは各個人のマインドモデルのことです。一人ひとりの個人が持つ信念や価値観のことを指します。組織アンラーニングを推進するために、ラーニングの成否を握るには実は③の個人のマインド的アンラーニングになります。
氷山モデルに置き換えると、①が氷山の一角としてすでに目に見える顕在化された事象をアンラーニングするのは比較的容易ではありますが、②③と深層部分に潜在された事象が多く存在し、深層部分ほど実際の組織行動にも多大な影響を与えるといえます。
組織アンラーニングは個人アンラーニングが必須
では、具体的にどのような個人のマインド的アンラーニングが行われると組織全体がアンラーニング可能になるのでしょうか。
結論から申し上げると、「自分の行動や自分の成長で、組織も変わることができる」と一人ひとりの個人が心の底から思うことが大事になります。
新入社員だろうが、ミドルマネージャーだろうが、経営幹部だろうが、場合によってパート社員だろうが、
「たった一人の社員の声や提案が、今後の組織を大きく変えることがある」と個人レベルで確信がある場合、組織のアンラーニングのポテンシャルは非常に大きいものになります。
この状態になれたとき、一人ひとりの個人が「まず自分が変わることから始めよう」と自然に思うことができます。この土壌を創ることが組織アンラーニングの一丁目一番地になります。